おすぎむら昆の映画レビュー「あんなま」

鑑賞した映画に対して個人的な感想を書いていきます。

『異端者の家 (2024)』【85/100点: 宗教論破サスペンススリラー】

キリスト教プロテスタント一派である末日聖徒イエス・キリスト協会、いわゆるモルモン教のシスター2人が、頭脳明晰で笑顔が怖いオジサン(演じるのはヒュー・グラント!)が住む迷路のような家から脱出を図ろうとするサスペンス・スリラー。

≪ネタバレなし≫

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『教皇選挙 (2024)』【85/100点: 神に仕える聖職者も“人間”だった】

先日に選出されたレオ14世でも話題になった、ローマカトリックの総本山であるバチカンローマ教皇選出選挙、いわゆる“コンクラーベ”が題材のドラマ。主演はすっかり禿げ上がった元イケメン演技派俳優レイフ・ファインズ

選挙が題材ということで政治スリラーのような緊張感が全編に張り詰めており、上品な雰囲気の中のパワーゲームはとても面白かったです。監督はNetflixの『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガー。

≪ネタバレなし≫

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『新幹線大爆破 (2025)』【80/100点: 原作譲りの大味ストーリーと凄まじく迫力ある映像】

1975年に公開された東映パニックサスペンスの金字塔『新幹線大爆破』をNetflixにてリブート。というよりも続編。原作の“一定速度まで緩めたら爆弾が起動してしまう”という、『スピード』の脚本家グレアム・ヨストもヒントにしたことでも知られるアイディアはそのまま、原作の脂っこいキャストはかなりマイルドに。

意図的なのかは分かりませんが、ゴリゴリに大味なストーリーも原作譲りです。ただ映像面ではこれ以上ないくらいに“パニック映画”として盛り上げており、正直言うと映画館で観れなかったのが残念で仕方がない映画でした。一応、総評として今回75点ですが、映画館で観たらもうちょい点数プラスしたでしょう。何やっとんねん東映さんは

《ネタバレなし》

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『ロングレッグス (2024)』【55/100点: 10年に一度の怖い映画、ではない】

猟奇連続殺人事件を調査を行う新人FBI捜査官と、連続殺人犯“ロングレッグス”の攻防を描いたサイコスリラー。タイトルロールである悪役“ロングレッグス”を脂っこい演技に定評があるニコラス・ケイジが、もはや誰だか分からないような特殊メイクで演じています。新人FBI捜査官のリーを演じるのは、『イット・フォローズ』など、通好みのサスペンスやホラーでお馴染みのマイカ・モンロー

尚、監督のオズグッド・パーキンスってワタクシ誰だか知らなかったんですが、なんと『サイコ』のノーマン・ベイツ役として知られるアンソニー・パーキンスの息子さんだとか。オズ監督自身の子供のころの家庭環境が反映されているとかなんとか、っていう部分もあるそうで、ニコラス・ケイジの脂っこい演技もあり、『サイコ』よろしく、終始作品の雰囲気は不気味です。展開がもうちょっと面白ければ良かったのに、と思ってしまうちょっと勿体ない映画でした。

≪ネタバレちょっとあり≫

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『ANORA アノーラ (2024)』【90/100点: 笑って泣けるシリアスドラマ】

2024年度のカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)、米アカデミー賞作品賞など総なめ状態のロマンティック・コメディ“風味”の人間ドラマ。主人公の“アニー”ことアノーラを演じるのはタランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でマンソン・ファミリーのスーザン・アトキンスを演じ、派手に死んだ姿がワタクシ的にとても印象的だったマイキー・マディソン。

遅生まれらしいので、橋本環奈とほぼ同い年です。印象的な三白眼もあり、ワタクシは『ワンハリ』以後、「ハリウッドの小松菜奈」と呼んでいたのですが、本作での熱演もあり見事オスカーも獲得。セックスワーカーの苦悩と差別を描いた、というよくある映画と思いきや、言ってることは男性のワタクシでも割と共感できる普遍的な内容。
ええ、本当に傑作でした。

≪ちょっとネタバレあり≫

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