おすぎむら昆の映画レビュー「あんなま」

鑑賞した映画に対して個人的な感想を書いていきます。

『28年後… (2025)』【75/100点: 全裸追いかけっこは怖い】

ワタクシ個人的には現在までハズレ無し監督であるダニー・ボイルが20年ほど前に手掛けたイギリス製作のパンデミックスリラー『28日後…』、その続編でこれまた傑作だった『28週後…』に続くシリーズ3作目。

処女作『28日後…』の冒頭で描かれたパンデミック開始から数えて28年経ったイギリスのが舞台になっており、感染者(要はゾンビ)とは離れた隔離生活を送るコミュニティに住む家族の12歳の息子が主人公。父親役はアーロン・テイラー=ジョンソン、母親役はジョディ・カマーが演じています。

≪ネタバレなし≫

お話

人間を凶暴化させるウイルスが大都会ロンドンで流出し、多くの死者を出した恐怖のパンデミックから28年後。生き延びるために海を隔てた小さな孤島に逃れた人々は、見張り台を建て、武器を備え、身を潜めて暮らしていた。

ある日、島で暮らすジェイミーと、島を一度も出たことのない12歳の息子スパイクは、ある目的のために島の外へと向かい、本土に渡る。彼らはそこで、人間が人間でなくなった感染者だらけの恐怖の世界を目の当たりにする。(映画.comより)

ダニー・ボイルアレックス・ガーランドが復帰

とりわけシリーズ1作目の『28日後…』はそのスピード感もあって今観ても結構面白いんですが、今回は1作目のダニー・ボイルが監督として復帰。センス抜群の映像やカット割、ウィットなジョークなど、バリバリにボイル印の映画になっています。まあ、とはいえ若干パンチに欠ける映画にはなっていますが。

前述の通り、パンデミックから28年後のイギリスが舞台で、『28週後…』のラストで世界へのパンデミック拡大を予感させる結末だった中、28年後には結果としてパンデミック自体はイギリスのみ収まり、感染者から逃れたイギリス人が点在する実質的な“ムラ社会”になっています。この極端な舞台設定は脚本のアレックス・ガーランドが昨年手掛けた映画『シビル・ウォー』を彷彿とさせ、雰囲気的にも実は結構似ています。ただ、『シビル・ウォー』は淡々と話が進む分、こっちはこっちで随所に独特な映像装飾がされているっていう極端な違いはありますが。個人的にはこっちの方が好きですけれども。

恥部丸出しゾンビ

そんなワケで、さすがに28年も経てば終始逃げ回ってるというフェーズは既に終わっていて、むしろそれを避けて生活コミュニティを築くという、ロメロゾンビの後期の映画『ランド・オブ・ザ・デッド』みたいな世界観になっています。逆にゾンビたちも野生生物的に序列まで出来つつ、そもそも服の概念が無い野生化をしているのでポコチンなど恥部も丸出し。

基本的に全裸のゾンビたちが襲い掛かってくるという点では、これまでのゾンビ映画ではある意味一番怖いとも言える映画になっています。ある意味、ワタクシ的にはゾンビ映画に関して長年疑問だった点((つまり服の概念の有無)))を映像化していたので、それだけでもなかなか面白かったです。

過去シリーズと比べるとやっぱり劣る

とはいえ、『28日後…』や『28週後…』と比べると、人々がサバイバル生活に慣れちゃっているので、前述の2作で見られた生きるか死ぬかみたいなヒリヒリ感はだいぶ弱く、どっちかというと映画内の雰囲気としては牧歌的な感じすらします。特に『28日後…』に関しては、ゴーストタウンになってしまったロンドン、という冒頭から強烈な画があった分、今回はそういう部分が殆どないので、年明けに公開予定だという同時製作中だったという続編には期待したい部分だったと思います。

ちなみに続編では『28日後…』でキリアン・マーフィが演じた主人公のジムが帰ってくるとのことですが、ジムが主人公を助力する立場なのか、はたまた残酷な人間になってしまっているかはちょっと気になります。

とりあえず言えることは、全裸の狂った人間が全力疾走で追いかけてくる映像はとにかく怖いってことです。しかもほとんど全編。その点に関しては平凡なホラー映画を凌駕していました。