インディーゲームの新鋭KOTAKE CREATEの大ヒット同名ゲームを映画化したホラー映画。原作のゲームは、小島秀夫のゲーム『P.T. (サイレントヒル)』などに影響された一人称視点のゲームで、やることはループする駅の地下通路の“異変”を8回見つけてループから脱出する、という要は3D空間を使った間違い探し。ワタクシも1年位前にプレイしているんですが、評判通りなかなか面白いゲームで、個人製作のゲームなので当然ながらそんなにボリュームはないものの、その分値段も安いし、満足度は高い1本でした。
そんな大ヒットゲームの映画化ということで、主演は二宮和也、監督は東宝から独立した敏腕プロデューサーの川村元気、その他スタッフも大作経験者揃いという結構大規模な布陣で映画化。ストーリー的にはイマイチ盛り上がりに欠ける話ですが、映像的には本当にまんま『8番出口』で面白かったです。
【ネタバレなし】
お話
蛍光灯が灯る無機質な白い地下通路を、ひとりの男が静かに歩いていく。いつまで経っても出口にたどり着くことができず、何度もすれ違うスーツ姿の男に違和感を覚え、自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。そして男は、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つける。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から、外に出ること」。男は突如として迷い込んだ無限回廊から抜け出すべく、8番出口を求めて異変を探すが……。(映画.comより)
『シャイニング』じゃねえか!
先に言っちゃうと、ニノ演じる主人公の背景設定や河内大和演じる歩く男の描写が全然ピンと来ず、「考察したくなる」等と他のレビューで言われてるストーリーに関しても、個人的には「難解」というほどでもないので、「突然現れる人物」「濁流」「シンメントリーの画面構成」など、あからさまな『シャイニング』のオマージュシーンもあるんだから、『シャイニング』くらい小難しい話にしても良かったんじゃないかとも思いました。
展開に関しても何だか露骨に他の映画が参考にされているであろう、薄ら見覚えがある話なので、ちょっとそこら辺はもっと捻っても良かったのになと。後半の少年だってねえ、おそらくSF映画の『メッセージ』が元ネタだろうし…。
オマージュ(引用?)自体は面白い
ただ、その『シャイニング』オマージュ的な映像は割と面白く、冒頭からの地下鉄から地下道までの長回しカットたちはなかなか見応えがあり、その一連の映像は映画好きならフェチズムというか琴線というか、ちょっとマニアックな感動を感じてしまうだろうカットばかりで良かったです。そもそもの原作『8番出口』を既にプレイしてたら「ああ!」ってなる展開も練り込まれてたり、それが怖い描写に直結するのでその点も楽しめます。ホラー映画的なジャンプスケアも結構少なめで、邦画らしいジワジワ怖い、的なホラー演出を入れているのでそこは丁寧でした。そういえば川村元気って『来る』のプロデューサーだったはずなので、そういう要素を盛り込んでいる感じでしょうか。
そんなワケではストーリーが全然盛り上がらない点や、割と節操のない他映画へのオマージュは映画好きであればあるほど気になるような気がする『8番出口』の映画化でしたが、95分というタイトな尺もあり、手頃に楽しめるホラー映画だったような気がします。ほぼ全編なっさけない顔したニノ、という点もファンにとってはご褒美みたいな映画なのではないでしょうか。どこかで「『世にも奇妙な物語』っぽい」という感想を観た気がするんですが、本当にそんな感じの映画でした。