おすぎむら昆の映画レビュー「あんなま」

鑑賞した映画に対して個人的な感想を書いていきます。

『ワン・バトル・アフター・アナザー (2025)』【65/100点: 題材の割に長い】

最近情けない中年男性ばっかり演じている俳優レオナルド・ディカプリオ主演のサスペンスアクション映画。レオが演じているのは、またしても情けない親父で、革命派のグループに所属していた過去がありながら、のっけからヤクをキメていたりとどうしようもない役柄。監督は“出来る方のポール・アンダーソン”こと、インディ映画の巨匠となったポール・トーマス・アンダーソン

≪ネタバレなし≫

お話

かつては世を騒がせた革命家だったが、いまは平凡で冴えない日々を過ごすボブ。そんな彼の大切なひとり娘ウィラが、とある理由から命を狙われることとなってしまう。娘を守るため、次から次へと現れる刺客たちとの戦いに身を投じるボブだが、無慈悲な軍人のロックジョーが異常な執着心でウィラを狙い、父娘を追い詰めていく。(映画.comより)

異例なほど観やすいPTA映画

原題の“One battle after another”は「次々と続く闘い」という意味で、PTA監督初の本格的アクション映画でしたが、文学的でインテリっぽい作風はそのまま、活劇を重視したアクションの多さも見どころ。ラストの勾配な地形を活かしたカーチェイスなど見どころが多い一作です。シンプルに盛り上がりに欠ける点さえ除けば、PTA監督史上最も取っ付きやすい一作だと思います。

それ故にエッジが無くなっている気がしたり、左翼的思想がやたらと極端だったりと、良くも悪くもな部分もあったりするのは残念なところで、その点は昨年の『シビル・ウォー』と感触として変わらなかったのも本音でした。あと、内容や設定に対して「いくら何でも尺が長いんじゃない?」と思ったのはワタクシだけではないはず。

話としては左翼思想の革命戦士だったボブ(元の名はパット)が色々あって流れ着いた場所で、一人娘のウィラと過ごす生活の中、革命における敵であったロックジョーに突如追われ、その中で過去に2人の前から姿を消した母親パーフィディアの生存を認識し、その姿を追いかける、というモノ。尚、原作(原案?)は小難しい作風で知られるトマス・ピンチョンの作品群の中でも「比較的読みやすい」と言われる『ヴァインランド』で、まあワタクシはそもそも全く読んだことがないんですが、原作も原作でダメ親父とちょっと賢い娘のお話なんだそうです。

ヘタレなディカプリオ、キモいショーン・ペン

前述の通り、ヘタレ役も板についてきたレオナルド・ディカプリオがまたしても演じるヘタレ&クズの最新作になっており、そろそろ見飽きてきたな感も若干感じつつも楽しめます。とはいえ、本作だと何といってもショーン・ペンの変態演技がなかなか凄みがあり、渋めのワイルドな見た目のイメージをブチ壊すキモさはとても強烈。終盤に進むに連れて、あまりにも不死身なのも面白く、広大なロケーションで繰り広げられるカーチェイスも相まって懐かしの『ヒッチャー』を思い出す不気味さでした。

そんなワケで「題材の割に尺が長い」という根本的な欠点はありつつも、俳優の演技で十分楽しめる一作になっており、特にきっと賞レースにも絡むであろうショーン・ペンの変態演技は一見の価値あり。PTA映画らしい文学的な雰囲気も楽しめるので、かなり異色な雰囲気のアクション映画でした。ただPTA監督の最高傑作なのか、というと個人的にはそうは思わないですけど。