おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『PERFECT DAYS (2023)』【60/100点: 公共トイレPRムービー】

トイレ掃除が仕事のおじさんが、変わり映えのない生活の中で日常の微かな幸せを感じる的な映画。日本びいきのヴィム・ヴェンダース監督による一作で、小津安二郎映画の影響を度々発言していたヴェンダース監督が満を辞して日本を舞台に長編を撮ったとも言える“邦画”。

一方で、「非正規雇用でもこんなに幸せになれます」的な広告代理店っぽい著しく表面的な視点も感じたのも正直本音で、「もしや…」と思いきや、案の定電⚪︎さんが絡んでました。

【ネタバレなし】

お話

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。

そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。(映画.comより)

外国人から見た「NIPPON」

役所広司が演じる平山は毎日黙々とトイレ掃除がお仕事の寡黙なおじさんで、日々自分で決めたルーティンで生きるおじさん。同僚の兄ちゃんには「この人変わってる」と言われるほど朴訥とした人間なのですが、そんなおじさんがいつものルーティンとは違う日々を追った内容。疲れてる時に観たら確実に爆睡しそうな映画ですが、見どころはやはり外国人から見た日本の美しさ。

所謂外国人が日本ロケした映画あるあるではあるのですが、ワタクシども日本人から見ると何てことない日本の風景も、ドイツ人監督の目線が良くある邦画とは注目点が異なっており画的に面白い切り取り方になっています。逆に言うと個人的には見どころがそこがほぼ全てな感じもあり、「ただ楽しみたい」という映画ファンからすれば相当にシンドイ映画なんじゃないかな、とも同時に思います。*1

広告代理店がスポンサーの映画

また、元々本作って“THE TOKYO TOILET”っていう日本財団主催の公衆便所のイメージアップ(?)を目指す公共プロジェクトの一環で出来た映画ということ。前述の通り、よく調べたらこういうプロジェクトには大体首突っ込んでいる⚪︎通さんの名前があり、「このどことなく漂うPR感はそういうことか」と思いました。

tokyotoilet.jp

特に何かが起こるわけではない映画

基本的には良い映画ではあるものの、それといって何か起こる訳でもない映画なので、正直やや物足りない映画ではありました。ただ、役所広司って『孤狼の血』とは真逆の本作のような映画も出来るとなると、そりゃこれならカンヌで賞獲るわ、と思ってしまいました。

*1:何度もインサートされるスカイツリーは「さすがにしつこいぞ」と思ってしまいましたが。