おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ブラック・フォン (2022)』【80/100点: あの世と繋がる黒電話】

2004年に、霊媒師モノと法廷劇を組み合わせるという、なかなかエッジーな異色作『エミリー・ローズ』を撮ったことのあるスコット・デリクソン監督によるホラー映画。

製作陣は安定のブラムハウス。

【ネタバレなし】

お話

コロラド州デンバー北部のとある町で、子どもの連続失踪事件が起きていた。気が小さい少年フィニーは、ある日の学校の帰り道、マジシャンだという男に「手品を見せてあげる」と声をかけられ、そのまま誘拐されてしまう。気が付くと地下室に閉じ込められており、そこには鍵のかかった扉と鉄格子の窓、そして断線した黒電話があった。

すると突然、フィニーの前で断線しているはずの黒電話が鳴り響く。一方、行方不明になった兄フィニーを捜す妹グウェンは、兄の失踪に関する不思議な夢を見る。(映画.comより)

二枚目俳優×大御所小説家の息子

殺人鬼“グラバー”役は二枚目演技派俳優の大ボス、イーサン・ホーク。他、学園モノ系の映画なので子役たちがいっぱい出てくるのですが、そこまで紹介したらキリがないので割愛。

原作はホラー作家ジョー・ヒルによる短編ホラー『黒電話(The Black Phone)』。で、このジョー・ヒルという人、なんとなんとスティーブン・キングの実の息子とのことです。確かに本作のネチネチとしたイジメ描写は父親キングっぽい。親子揃って「学校」という存在に耐え難い恨みでもあるのだろうか…

いじめられっ子と強い妹

ということで、『IT』などのように学園ホラー映画あるあるに則って、主人公の少年フィニー君はゴリゴリのいじめられっ子なのですが、一方で人力があるのか周りに味方もいっぱいいるのです。特にフィニー君の妹グウェンちゃんは若干ブラコン気味な上に、『キック・アス』のヒットガール並みに言葉遣いも悪いという最強の妹なのですが、ここら辺も一応後半の伏線にもなっています。

とまあ、前半はドロドロの学園モノ、後半は監禁サスペンスホラーと雰囲気が一変するのですが、学園場面も『IT』みたいなしょっぱい雰囲気ではなく、妙に生々しくってよかったです。まあ若干、学園場面が長い気もしましたが。

後半からの展開も秀逸

後半から雰囲気が一変し、一気にギアチェンジしてきます。「監禁」とは言うものの、殺人鬼グラバーはいくつか逃げ道を残して「逃げたら追いかけて殺す」という、マジ●チゲームで興奮する変態なので、この点が非常にハラハラしました。

それで、この監禁部屋には電話回線も、ましてや電源も繋がってない黒電話(ブラック・フォン)があるのですが、フィニー君が絶望のフチの中、何故か…この電話が鳴り始めるのです。何とこの電話、おそらく“あの世”と繋がっており、過去に死んだ犠牲者たちがフィニー君に色々逃亡手段のヒントをくれるのです。

まさに“怖面白い”展開なんですが、ハラハラする展開の中、しっかりとホラー演出を挟んでくる辺り、いい意味で抜け目ないな、なんて思いました。さすが『エミリー・ローズ』の監督。

久々のアパム

ラストは少し感動する展開。なかなかシビれる終幕でした。ホラー映画出身のデリクソン監督の底力を感じさせる、抑えるとこは抑えた秀作だったと思います。

主人公の父親役の人、ずっと「どっかで観たことあるなコイツ」と思って後から調べたら、『プライベート・ライアン』のヘタレ兵士アパムの人でした。すごく渋い顔になってましたね。

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