おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ゲーム (1997)』【80/100点: 水曜日のマイケル・ダグラス】

鬼才デヴィッド・フィンチャーの3作目の劇場公開作で、インパクト強めなフィンチャー作品の中でもとりわけ目立たないポジションにある一作。当のワタクシもこれまで観たことない唯一のフィンチャー作品だったのですが、Netflixでの配信が間もなく終わるってことで観たみたらまあ面白い。

ものすごく雑に要約すると、マイケル・ダグラス演じる資産家のニコラスが謎の“ゲーム”に参加するハメになり、人生が瞬く間に崩壊し、挙句の果てに「実はこれ全部ドッキリでした」という『水曜日のダウンタウン』的なトンデモオチで締まる内容です。

【若干ネタバレあり】

お話

投資家として成功したものの、離婚後、孤独な毎日を送っていたニコラスは48歳の誕生日に弟コンラッドに再会し、CRSという会社のゲームの招待状を受け取る。

ニコラスは好奇心からそれに参加するが、その時から奇妙で不可解な事件が続発。命まで危機にさらし、そのあげく財産や邸宅まで奪われることに……。(映画.comより)

怒涛のブチ切れ

内容としては真っ当なスリラーになっており、思い切り『ウォール街』の役柄と地続きな、いけ好かない資産家をマイケル・ダグラスが演じているんですが、お家芸である血管ブチ切れ演技が本作で炸裂しています。

主人公のニコラスが怒っていない場面なんて下手したらラストカットくらいしかないんじゃないか、ってくらいずっとニコラスはブチ切れており、そんな沸点の低いオジサンが終始「なにこれ!?」というトリックをかけられる性悪な内容なんですね。

紛れもなくフィンチャー映画

デヴィッド・フィンチャーの映画らしく、映像はゴリゴリに凝っており、1カットごとの神経質さは『セブン』と大差ありません。

猟奇性がない分、『セブン』よりもだいぶ大人しくも見えてくるんですけど、内容の不条理さは『セブン』より上なんじゃないかな、とワタクシ的には思いました。

キャストも実力派揃い(名前分からない人ばかりだけど)

弟役で登場するのもこれまたブチ切れ系演技の大御所であるショーン・ペンであり、「兄貴を“ゲーム”に誘う」という重要人物の役柄を飄々と演じています。その他、脇を固めている俳優の皆さんも、「名前は覚えてないけどなんかで観たことあるぞ」的な絶妙な配役になっており、これはこれで結構面白かったです。

ちなみに、主にオープニングにしか登場しないニコラスの父役は、この間まで25年間スーパーマリオボイスキャストを演じていたチャールズ・マーティネーさんらしいです。声は出てこないですけどね。

よくよく考えると結構無理のある話

よくよく考えてみたら、「全財産失って挙句の果てに死にかけて」という展開故に、ラストの「いや~アニキ、これドッキリなんだよ~」ってオチに対してニコラスがやたらと冷静で、しまいにゃ「これドッキリなんだ…なら良かった」みたいなことも言うのは若干腑に落ちませんでした。あれだけ沸点低い人ならばブチ切れ倒すような気もするんですけど、そこのところどうなんでしょう。

とはいえ、基本陰惨な内容であるフィンチャー映画としてはエンタメ性は抜群に高く、期待よりは全然面白かったです。デヴィッド・フィンチャーらしいブラックな笑い要素を若干感じる作風は、『ファイト・クラブ』にも良い感じで受け継がれたんじゃないかと思った部分で、となると本作って結構価値のある映画なんじゃないかな、と思った『ファイト・クラブ』フォロワーのワタクシでした。