監督は後に『イコライザー』シリーズで我々映画ファンをウキウキさせてくれるアントワン・フークワ、主演は本作でハリウッド・デビューを果たす『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファ、プロデューサー陣も同じく『男たちの挽歌』のジョン・ウーを始めとする香港ノワールスタッフ揃い。
映画ファンならオシッコ漏らしちゃいそうな布陣なんですが、しかしながら本作自体は駅ナカのラーメンのような薄口の映画です。いやまあ、ガンアクションだけは、ハリウッド版『男たちの挽歌』といったところでめちゃくちゃカッコいいんですけどね。
【ネタバレなし】
お話
自分の息子を手にかけた刑事・ジーコフへの復讐のため、チャイニーズ・マフィアのドン、ミスター・ウェイは殺し屋のジョン・リーにジーコフの息子の暗殺を指示。ジョンは子供を殺せず、ある思惑から偽造屋のメグ・コヴァーンを訪ねるが、組織に急襲される。(Filmarksより)
傑作『狼 男たちの挽歌・最終章』の続編的映画
ジョン・ウーとチョウ・ユンファがハリウッド・デビューを果たすキッカケは、1989年の『狼 男たちの挽歌・最終章』がアメリカで『The Killer (殺し屋)』のタイトルで公開されて、壮絶なアクションにエモーショナルなドラマがとても注目を集めたおかげだったりします。
即ち、本作『The Replacement Killers (代理の殺し屋)』というタイトルも含めて、内容に関しても前述の『狼〜』をオマージュ…というか実質的な続編を意図したモノ*1なんですね。
アクションは良くて話はグダグダ
オープニングのガンアクションからなかなか痺れる登場をするチョウ・ユンファ演じるジョンですが、残念ながらその後のドラマ性は皆無という状態。この点はジョン・ウーのハリウッド・デビュー作『ハード・ターゲット』でも同様だったので、同じ轍を踏んだといったところでしょう。
せっかく“裏切り”“男の友情”など、モロに香港ノワール風なベースストーリーがありながら、どれもほぼ中途半端に尻切れする為、この点は些か残念な部分です。特に、主人公のジョンが「何故、犯罪組織と対立して激闘に挑むのか」という、展開におけるクエスチョンがかなり中途半端に描かれてるので、結構唐突な展開が多め。映画の尺が90分弱と短めなこともあり、本来もっとあったであろうドラマ性がだいぶ割愛されている様子が伺えます。
当時のジョン・ウーがやれば傑作になったのでは?
とはいえ、頭に書いた通りですけど、しっかりジョン・ウーナイズドされたガンアクションは異常にカッコ良く、挽歌シリーズでおなじみのチョウ・ユンファのダンスのような銃捌きでテンションは嫌でも上がります。「ここはスロー映像使わなくて良いのでは?」と思う場面がいくつかあるのは内緒ですが。
惜しむらしくは、「本作はジョン・ウーが監督すれば良かったんじゃない?」と思ってしまう点で、この時期に取り組んでいたという『ミッション:インポッシブル2』を降板して本作を手がけていれば、ジョン・ウーのハリウッド映画界におけるキャリアももっと華のあるモノになったんじゃないかな、と少し思います。
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*1:ユンファの役名も“ジョン”という名で同じ。