おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『羊たちの沈黙 (1991)』【90/100点: レクター博士の圧倒的存在感】

トマス・ハリスの同名ベストセラー小説を映画化したサスペンス・スリラー。映画自体は“名作”と名高い故、散々語られていますが、今観ても抜群に面白い一作であります。

【ネタバレなし】

お話

FBIアカデミーの優秀な訓練生クラリスは連続誘拐殺人事件の捜査スタッフに組み込まれ、犯罪者として収監されているレクター博士と面会する。それは、天才的な精神科医でありながら、自らの患者を次々と死に追いやったレクターこそ事件の謎を解く鍵になると見込んでのことだった。レクターはクラリスに興味を示し、捜査の手がかりを与える。ふたりが次第に心を通わせていく一方、新たな誘拐事件が。そしてレクターは脱獄を図り……。(映画.comより)

現在のサスペンスの始祖

話としては、若い女性を狙った“バッファロー・ビル”と呼ばれる連続殺人犯の捜査官に任命されたFBI訓練生クラリスの、決死の捜査と恐怖を描いた内容です。映画公開当時で考えてみると、所謂サイコ・サスペンスのはしりとなった映画になるワケですが、ヒシヒシと伝わる居心地の悪さと徐々に真相に辿り着くクラリスの若々しい捜査っぷりは一級品。

ハンニバル・レクターの存在感

それで、やはり語らなければいけないのがアンソニー・ホプキンス演じるレクター博士になってくるんですが、アンチメソッド演技役者として知られるA.ホプキンスが、「レクター博士とはどういう人なのか?」という掘り下げを一切していないこともあり、得体の知れない人物としての魅力がダダ漏れしております。

言うまでもなく、クラリスレクター博士の初接見の場面は凄まじい緊張感のワケで、その上でレクター博士クラリスパワハラの如く弄りまくるので、ゾクゾクしてしまいます。ドS(?)のレクター博士がマウント取りまくりな場面になるんですが、ジョディ演じるクラリスも次第にムッとし始める表情になるなど、細かい演出が効いた紛れもない名シーンであります。

傑作な本作に対して、続編はことごとくダメだった

その後もアンモラルな描写に秀逸なストーリー展開と、ホラー映画的ともいえる猟奇的なゾクゾク感と謎解きが紐解かれるサスペンス感覚がダブルパンチでくる為、これが恐ろしいくらいに楽しい映画になっています。

残念ながら続編の『ハンニバル』では猟奇的な面に舵を向けて何か微妙な映画に、その次の『レッド・ドラゴン』では逆に後者のサスペンス描写に力を入れ過ぎてこちらも微妙な映画になってしまっていた為、本作自体がいかに奇跡的なバランスを持った映画ともいえるかがよく分かります。

内容が少し血生臭いだけに、堂々と人にオススメ出来ないのが残念ですが、ワタクシ的には数ヶ月に1回くらいのペースで観れる素敵な映画だな、なんて思っております。