おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ちひろさん (2023)』【55/100点: 女版『男はつらいよ(どっちやねん)』】

有村架純が主演のヒューマンドラマですが、有村架純演じる”ちひろ”が元風俗嬢、というバックグラウンドがある役柄なものの過激な描写は特に無く、女版『男はつらいよ(どっちやねん)』って感じの内容です。

【ネタバレなし】

お話

海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働く女性・ちひろ。元風俗嬢であることを隠さず軽やかに生きる彼女は、自分のことを色目で見る男たちも、ホームレスのおじいさんも、子どもも動物も、誰に対しても分け隔てなく接する。

そんなちひろの言葉や行動が、母の帰りをひとり待つ小学生、本音を言えない女子高生、父との確執を抱える青年など、それぞれ事情を抱える人たちの生き方に影響を与えていく。ちひろ自身も幼少時の家族との関係から孤独を抱えて生きてきたが、さまざまな出会いを通して少しずつ変わり始める。(映画.comより)

「お返しなんていらない」的な女性・ちひろ

有村架純演じるちひろですが、元風俗嬢で現在はお弁当屋で働いており、口は悪いけど美人でノリも良い為、人気の定番店員です。

このちひろですが、性格がものすごくフラットで、加えて男女問わず頼まれごとに対してギブアンドテイクも求めないような不思議チャンなんですが、そんな性格が幸いしてかワケありの仲間たちが集まり、そんな仲間たちの若干逸れた道をマイペースに正していく、というのがちひろのキャラクターです。

寅さん…?

ワタクシ的に前述のあらすじで振り返っても「えっ、寅さんじゃん」って思ったんですが、まあそんなお話なんですね。雰囲気も何となくテレ東の深夜ドラマって感じであんまり起伏もなく、何なら映画中の人々たちのドラマは大して盛り上がりもせず終わります。

コロナ禍初期に、勤める会社が緊急事態宣言で一時期休業となり、暇すぎて1週間かけてAmazon Primeにあった『男はつらいよ』49作をエンドレスで観るチャレンジをして成功したワタクシですが、この『ちひろさん』は寅さん的なすべてを語らない人情劇って感じかな、と思いました。

行動原理が良く分からない

とはいえ、寅さんみたいな「何かよく分かんないけど笑える」って映画ではない為、終始漂う雰囲気の深刻さはちょっと気になりました。また、当のちひろがあんまりにも性格がフラット過ぎて、本当に何考えてんのか分からない感じのキャラクターになっており、作品中の行動も「結局あれ何だったんだ」みたいな瞬間もあります。

ただし有村架純の現年齢相応の役柄ではある

有村架純の役柄自体は、演じてる本人が今年30歳なので何となく年相応に感じつつ、ちひろへのキャラクターのフォローがもう少しあれば、何となくこのアラサー弁当屋店員の心情も理解できるのにな、って思いました。決して嫌いな内容の映画ではないのですが、何か色々勿体なかったッスね。