おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『バービー (2023)』【70/100点: 男女格差とは、を問うピンク色の社会派作品】

我らがハーレイ・クインことマーゴット・ロビーがバービー人形を演じるコメディ映画で、2023年に全世界で大ヒットしたものの、何と日本では一瞬でIMAX上映が終わるという超絶大コケをしたファンタジックなコメディ映画。

公開前後で『バービー』の公式Xアカウントが原爆を揶揄したことが発端となった「バーベンハイマー」騒動があり、公開時点で負け戦状態だったのも大コケの一因ではあるものの、ファンシーのルックスに反して、言っていることはゴリゴリに多様性を訴える社会派な内容。集団主義がベースになっている日本だと、バーベンハイマー騒動とか以前にそもそも説教くさ過ぎる内容過ぎて売れなかったんじゃないか説は、個人的に本作に対して思った部分です。とはいえ、そこそこ面白かったですね。そこそこ、ですが。

【若干ネタバレあり】

お話

ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。

困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。(映画.comより)

結構ムズい話だぞ!

本作の舞台となる“バービーランド”は「生」はあるものの「死」は存在しないという世界観になっており、もっと広義的にはルックスとしての住み分けとして男女は存在しているものの、身体的な性別というモノは存在しない(要は性器がない)という究極にピュアな場所なのです。

本作はそんなバービーランドの実質的な女王であるマーゴット・ロビーのバービーが「死とはなんだろうね」と思うところから話が始まり、人間性の欠片もないバービーランドを飛び出して現実世界に行くことになったバービーが、現実世界の「人間性」と向き合うという話。どエライ難しい話やんけ。

有害な男らしさ

画面上にピンク色が登場しない場面がないので「サンリオ?」と思ってしまうガーリーなデザインの映画になっているものの、一応コメディっぽい場面はチラホラありつつもストーリーは妙にシリアスな雰囲気もあるので、鑑賞後の感想としてはギャグでも何でもなく、井脇ノブ子(ピンク色も含め)を想起してしまったのは言うまでもありません。本作の重要人物が、他でもないバービーの永遠のボーイフレンドであるケンで、ケンが男性上位的な世界である現実世界に染まっちゃいます。気が付けばケンは人間的な、若干男尊女卑よりの「男らしさ*1」に目覚めてしまい、女性上位で均整を保っていたバービーランドが崩壊しかかってしまう的な展開になります。

総じて言うと「意識が高い映画」

こんな感じでメッセージ性が異様に強い映画になっていることと、最終的に本作が言う結論も「みんな違うけどみんな素敵だよ!性別に関係なく個人は尊重されるべき!」となるワケで、「うわあ意識たけえ…」って感じの映画になっています。本作で言われる「男らしさ」がギリギリ男性嫌悪的なモノではないのは唯一の救いですが、純粋に「面白かったか」と言われると、「普通に面白かったけど…なんかね」と一拍おいてしまう気もします。

そんなワケで我々日本人には早いのか、はたまた遅いのか分からない社会派(笑)作品になっているんですが、ビビットな映像は結構見応えがあり、ミュージカルシーンも良く出来てて普通に面白いです。何よりマーゴット・ロビーが相変わらず美人。「バービー」という存在に説得力があるのはこの人のおかげなのは間違いないでしょう。

*1:本作で言われる「男らしさ」とは、いわゆる“家父長制”のこと。