おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『哀れなるものたち (2023)』【55/100点: 果たしてそれは自立と言えるのか】

自殺した女性が胎児の脳を移植されて蘇り、幼児のような言動や行動をしつつも色々「人間」について学んでいき、果ては性差別や偏見を乗り越えた1人の女性として確立していく、というエログロ描写満載のSFコメディ。

R-18ということで、前触れも無く無修正のお●んちんが何本も出てきたり、主演のエマ・ストーンがいつの間にかスッポンポンになっていたりと、だいぶ刺激の強い映像が連発してくる映画です。所謂フェミニズムと人間の学び・知識についての映画でありそれなりに考えさせられる内容なものの、如何せん前述のような品がない描写がほぼ全編繰り広げられる為、特にエロの部分は集中力を阻害されている気分でした。

【ネタバレなし】

お話

不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。(映画.comより)

シュールで奇抜な映像とカメラ

予告編で分かるシュールな世界観はそのままで、絵本のような不思議な映像はなかなか見応えがあります。また、魚眼カメラのような映像によく動くカメラワークなど、主に映像面での見所は個人的にたくさん発見出来ました。特にカメラワークに関しては、これでもかというくらいゴリゴリに凝っており、未来とも過去とも言い難い本作の世界にマッチしていました。メルヘンな世界観で現実的なお話、という一種のミスマッチ感がよく醸し出てましたね。

俳優陣の演技は確かにすごいが…

俳優陣も総じて頑張っており、エマ・ストーンはかなり強いイギリス英語に、前述通り“奔放な女性”って役柄の為、突如全裸になったりして、セックスシーンに至ってはやたらと生々しかったりと、「俳優って大変だなあ」と思ってしまうくらいの雰囲気です。ただ、度々ある生々しくて露骨な性描写が、要は女性差別や偏見のモチーフであるとは何となくは理解出来るものの、個人的に「差別とか偏見って言ってんのにエロ描写満載って矛盾してないか」と少し疑問に感じました。

フェミニストは本作に納得できるのか疑問

特に、中盤でエマ・ストーン演じるベラは色々あって娼館で働くことになり、そこで働くガムシャラに生きる女性たちを見て「女の自立」を強く意識する的な展開があるんですが、これってSNSとかでよく居るフェミニストが嫌う”男性目線”のフェミニズムそのものなんじゃないのかな、とも思ったり。

フェミニズム自体はワタクシ的に全く否定していないし、むしろ個人的に先進的な考えだと思っていますが、何か本作が言ってるフェミニズムのメッセージってすごく抽象的で戯画化されているような違和感を感じました。

まあエマはオスカー獲るでしょうね

そんなワケでワタクシ的にあんまり乗れなかったんですが、まあとにかくエマ・ストーンの演技が凄かったです。既にオスカーノミネーションには候補に挙がっているので、今年のアカデミー賞主演女優賞はおそらく彼女でしょう。そのくらいパッと見でも頑張ってます。内容自体も批評家受けしやすそうな内容なので、ヴェネチア国際映画祭の金獅子も頷ける一作でした。

もう一度言うけど、

ワタクシはイマイチ乗れませんでしたが。