おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『アリー/ スター誕生 (2018)』【75/100点: 成功する彼女、堕ちていく彼氏】

往年の名作映画を現代でリメイクした一作で、長身童顔俳優のブラッドリー・クーパーの監督デビュー作。オーソドックスな“運命の恋”みたいな前半の後に、愛するカップルであることに加え“スター”としての現実問題に直面する地獄のような後半は対比としても見事だなと思いました。

ちなみに、過去の名作のリメイクらしいですが、その旧作は未鑑賞です。

【ネタバレ若干あり】

お話

音楽業界でスターになることを夢見ながらも、自分に自信がなく、周囲からは容姿も否定されるアリーは、小さなバーで細々と歌いながら日々を過ごしていた。そんな彼女はある日、世界的ロックスターのジャクソンに見いだされ、等身大の自分のままでショービジネスの世界に飛び込んでいくが……。(映画.comより)

正反対の2人の恋

ブラッド自身が演じているカントリー歌手のジャクソン・メインは音楽イベントに引っ張りだこの人気歌手で、一方でレディー・ガガが演じているアリーはイベント会場近くの場末のバーで働く歌手志望の女性。境遇としては正反対な2人が出会って、あれよあれよとカップルに。少女マンガのような展開ですね。

2人とも音楽的な才能があることもあり、序盤では借りてきた猫状態だったアリーは、ジャクソンの追力もあり“スター”としての階段を徐々に上がっていきます。2人の演技力も去ることながら、レディー・ガガ特有の太くて伸びのあるボーカルがいちいちカッコよく、気が付けば「ガガ様」なんて言ってらんないくらいアリーが憑依していました。

飽きないラブストーリー

こういう大人の恋愛モノで個人的にはダルく感じることも多いのですが、本作では歌唱シーンが定期的な見せ場となっていてなかなか飽きさせません。前半はそんな調子なのですが、本作が本格的にギアが入り始めるのが後半からです。

後半からは地獄のような展開

ジャクソンは元々薬物中毒者でアル中だったのですが、本作のオープニング時点では自分なりに制御した状態でした。物語の折で“スター”としてのし上がっていくアリーを喜びつつも、「あれ?俺ってオワコンになってないか?」といち芸能人として伸び代の限界に気がつき始め、そのストレスが重圧として伸し掛かります。

結果として、ジャクソンは止めていたはずの薬物とアルコールに再び溺れてしまいます。

鮮やか過ぎる初監督

前半までの華やかな成功美談から一転して、とてつもなく苦しい悲劇となっていくのですが、この表裏のような構成をまとめ上げている手腕は、初監督とは思えないくらいに鮮やかでした。

腰を据えて鑑賞すれば、“前半はアリーの物語”“後半はジャクソンの物語”という図式も分かってくるので、これはブラッドリー・クーパーの今後に非常に期待が持てる才能っぷりです。総じて言えば、大人のラブストーリーとしてもかなり上位の出来になっていると個人的には思っており、若干間延びしている感も感じつつも、最後まで面白く観れました。

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