おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン (1985)』【85/100点: 正義も悪も結局同じ】

NYの刑事VS中国人の青年マフィアの激闘を描いた1985年のマフィア映画で、苛烈な暴力描写も相まって人気の高い一作。破天荒な刑事を演じるミッキー・ロークと、冷静で淡々と事を進める若手マフィアを演じるジョン・ローンの2人がまあ~カッコよく、性格面だけは完全に対照的な2人のバトルは中々見応えがあります。

【ネタバレなし】

お話

チャイニーズ・マフィアの内部抗争が激化。その中で若き幹部ジョーイがのし上がっていく。ニューヨーク市警の刑事スタンリーはチャイナタウンの犯罪組織壊滅に乗り出す。スタンリーが強引な捜査を続ける一方、ジョーイも容赦ない殺戮を繰り返し、やがてドンの座へ。怒りに震えるスタンリーとジョーイがついに激突する!(映画.comより)

不良刑事

イカついタイトルの割に結構単純なお話の映画なんですが、本作の何が面白いって、このスタンリー刑事とジョーイ・タイの所謂「組織」での立ち位置なのです。

本作のオープニングの時点でNYのチャイナタウンに赴任するスタンリーですが、新任早々に強引な捜査を追行しのっけから上司に目を付けられ、それでも「俺にまかせてくれよ」とスタンスを全然変えないので、次第に警察組織で孤立していきます。

インテリマフィア

一方で、ジョン・ローン演じるジョーイ・タイは、至極冷静沈着ではあるものの、チャイナタウンを取り仕切る華僑マフィア組織の旧態依然な状況に不満のある若手マフィア。

おまけに商売敵を大多数静粛してまわった上、マフィアの上席から咎められても「人を喰わにゃおのれが喰われる、そうとちゃうか?」*1と、『仁義なき戦い』の梅宮辰夫ばりのド正論で啖呵を切ります。

暴走する2人

当然ながらジョーイも徐々に孤立していくような展開となっており、互いが互いを意識して火花が散り始める頃には、どっちともやっていることが完全にスタンドプレー状態になります。

即ち、「ポジションは違えど根本は同じような人間」というような内容になっており、脚本を担当している『プラトーン』で後に有名になるオリヴァー・ストーンらしい性悪な構成なんですね。

こういう展開もあり、後半以降は超絶バイオレンス版『ロッキー』みたいな雰囲気となり、怒涛の盛り上がりを見せてくれます。「観てみたいな」と思いつつ観たことがない映画だったので、年末に良い80'sの映画に出会えましたね。

*1:こちら元ネタは『仁義なき戦い』の梅宮辰夫のセリフですが、実際にそんな類の啖呵をジョーイ・タイが幹部会で言い放つ場面があります