おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『パラダイム (1987)』【85/100点: 液体になったサタン】

ホラー映画の巨匠ジョン・カーペンターの傑作スリラー。デカすぎる背景設定に対してミニマムな舞台という、カーペンター監督の真骨頂ともいえる映画で、サービスかの如く連発していくショックシーンに至っても、景気よくSTFを何度も決めてくれる蝶野正洋みたいで非常に好印象です。

【ネタバレなし】

お話

ロサンゼルスの教会で、司祭が緑色の液体で満たされた棺を発見。それには悪魔が封じ込められているらしい。超常現象の研究をしているバイラック教授と研究員たちが不穏な雰囲気に包まれた現地でその調査・解析にあたるが、やがて緑色の液体を浴びた研究員が他の者を襲撃するという事態に。難を逃れた数名が部屋に立てこもるが……。(映画.comより)

風呂敷広げまくりなストーリー

本作での諸悪の根源は古い協会に隠されていてグルグル動いている緑色の液体。追々発覚するのですが、この緑色の液体は“闇の王子(Prince Of Darkness)”のサタンそのものであり、その闇の王子の父親は「神」なのだ、と。色々あって過去に、父親である神に棺の中に封印されて、液体の姿にされてしまったんだそうです。(何じゃそりゃ)

「え?神の子供がサタン?」と意表を突かれるのですが、続けざまで“イエス・キリストは異星人だった”とトンデモ論も発覚します。んで、この“イエス・キリスト”はサタンに警鐘を鳴らそうとした異星人ということで、キリスト自体は神の子でも何でもない、っていう設定になっています。

なんだそりゃ…?

駆け抜けるB級感

B級感がすごい内容なんですが、むしろ効果的に設定を活用してデカく広げた風呂敷を丁寧に仕舞っていくあたり、カーペンター監督の手腕を感じます。そもそもカーペンター監督がゴリゴリの無神論者ということで、このような神学にケンカ売っているような内容になっているんですが、主義主張に走らずスリラー演出に徹しているのは好印象です。

カーペンターお得意の籠城戦もある

緑色の液体状になっている闇の王子(サタン)は、封印を解かれたことで人間に“寄生”という形で仲間を増やしていくのですが、この寄生を始めた辺りから「限定的な場所で籠城バトル」といった感じのカーペンター演出が冴えあたり始めます。

若干バッドエンドにも感じる重いエンディングも含めて、ホラーの巨匠が作る良いホラー映画のお手本のような映画だったと思います。