おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『アウトレイジ ビヨンド (2012)』【85/100点: バディになった敵同士】

人気ヤクザシリーズの第2弾。前作から5年後の山王会とその周辺による関東ヤクザの様が描かれており、今回は関東だけでなく関西の花菱会も登場し、抗争のスケールもパワーアップした、ある意味続編としては真っ当な構成となっています。

前作もなかなかの傑作でしたが、点数を5点アップしたのはひとえに魅力あるキャラクターの登場が増えたことでしょう。

【ネタバレあり】

お話

前作のラストで関本会長を射殺し、無理やり会長となった加藤(三浦友和)と元大友組の石原(加瀬亮)の新体制で、いよいよ政治の世界まで影響力を持った山王会。そんな折で、山王会が絡んでいると思われる刑事殺害事件も発生し、警察側も「必要悪とはいえ、そんなに暴れてもらっちゃ困る」ってことで、(前作にも登場した)片岡刑事により無理やり山王会弱体化を狙うも、ヘタレの古参幹部(中尾彬)がショボく殺されたくらいで組織的にもかすり傷程度。

困った片岡刑事は「死んだ」ということにしていた大友(たけし)を仮釈放させて、山王会弱体化に利用しようと企む、というのが本作のあらすじです。

大友の親分、生きていた!

前作のラストで敵対組織の木村に刺殺されて死んだ…ように見えた大友でしたが、実は生きていた、と。結構強引な展開ではあるのですが、特段この点を掘り下げる場面もない為、中盤くらいからはまあまあどうでもよくなってきます。

それで、今回の大友なのですが、前作の武闘派ヤクザとしての一面は(内面的にはあるものの)鳴りを潜めており、前作『アウトレイジ』で描かれたような小間使いのようなヤクザ業に対してほとほと嫌気さしている人物となっています。一方で、前作では大友と敵対する立場だった元村瀬組の木村も、5年経過して大友の当時の立場を理解し始めており、本作では一時の協力関係となります。敵同士だった2人が味方となって抗争に向かうという、まさかの悟空とベジータのようなバディ展開となるワケです。

ヘタレになった前作の悪いヤツら

そして、前作ではスマートなインテリ感のあった加藤と石原に関しては、序盤はまだしも、大友&木村による最強バディのおかげで後半からはずっと余裕のない状態となります。

「前作のダンディさはどこにいったんだ?」という感じではありますが、このように脚本構成の観点でも、キャラクター作りの点で前作のストーリーをあえてパラドックス化するということを行っており、ある意味『ターミネーター2』的な内容となっているっつーワケです。

関東外の組織たち

今回は関西の組織・花菱会も登場するということで、関西弁の怖いおじさんたちが登場。それが西田敏行が演じる西野、塩見三省演じる中田なのですが、この2人が怖いのなんの。特に塩見三省の中田なのですが、眉毛無しでドスの利いた声という最恐のイカツさで、中盤の大友&木村と西野&中田の怒号の応酬場面(メンチ切り)は桁違いの迫力です。
迫力で言うと、仮出所した大友のパトロンとなる韓国フィクサーの張会長&白竜も存在感だけで圧倒されるような顔面パワー。その他、小さい役でも沢山「あっ!」となる俳優さんがたくさん登場するので、もう『アベンジャーズ』状態となっています。前作の好評からか予算が随分増えているのを感じさせますが、そのおかげか前作以上にとにかく目を離せない映画となっています。

前作と同じ部分はありながら進化している

内容的な部分は怒号・パワーゲーム・裏切りと、正直前作と変わらない部分は結構あるものの、よく思い返してみれば『仁義なき戦い』シリーズも各々の作品ともに、(内容は置いておいて)登場人物はあらかたやっていることは変わらなかったので、ここら辺はヤクザ映画の轍といったところでしょうか。前作以上のキャスト陣の豪華さと、まさに適材適所のキャスティングということで、前作の点数からプラス5点献上。