おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『シン・仮面ライダー (2023)』【70/100点: 目が疲れる仮面ライダー】

昨年中旬の『シン・ウルトラマン』に引き続き、庵野秀明監修・監督による『シン〜』ユニバースの最新作。これまでもエッジが効いた内容に定評のあるこのユニバース企画ですが、世評的にはえらく賛否両論な印象が個人的にあるものの、ワタクシは普通に楽しめました。まあ気になるとこも確かにチラホラありますが。

【ネタバレなし】

お話

SHOCKERによってバッタオーグに改造されてしまった本郷猛は、緑川弘博士と緑川ルリ子とともに組織を裏切って抜け出します。最初はプラーナによって得た力で人を殺してしまったことに戸惑う本郷でしたが、あるとき緑川弘が殺され、死に際にルリ子を託されました。

本郷は覚悟を決め、「仮面ライダー」を名乗りながらルリ子と協力してSHOCKERと戦うことに。自分と同じように深い絶望を経験し「オーグメンテーション(強化手術)」を施されたオーグ達と戦っていきます。(ciatrより)

ド派手アクションのOP

冒頭から007みたいなかなり激しいバイクアクションから始まり、割と速攻で変身後の仮面ライダーさんが登場するのですが、この流れもはや無駄ナシです。初っ端からあり得ないくらい強いし、東映の往年の実録ヤクザものよりもハードな血みどろ肉弾戦。

「改造人間が常人の殴り合いするワケないだろ」というスタッフの声が聞こえてくるかのようです。

以降もバトルばかりの展開になっているおりますが、これまでのユニバースと同じくゴリゴリにカメラアングルも凝っているのに加え、今回は一般的な大人サイズのライダーと怪人が闘うので、画的に緩急がないことからかギリ目が疲れないくらいの画面の忙しさです。ワタクシはアングルフェチ的な映画鑑賞も趣味なので結構楽しめましたが。

キャストが異様に豪華

キャスト陣の豪華さもなかなか秀逸で、「あの人も?この人も?」ってくらいに意外な人がぶっ飛んだ演技を披露するので、キャラショー的にも楽しめた印象です。まさかサソリオーグが、クモオーグがあの人とは。美少女全振りな雰囲気の浜辺美波も、ツンデレ感満載なのでそういう癖が刺さる人は多いんじゃないかと思います。

台詞がよく分からん

この映画の良い点でもあり難点でもあるんですが、基本的に状況説明がほとんど無く、加えてかなり回りくどいセリフまわしなので、設定の紐解きに苦慮するタイミングもあります。

この点が賛否両論のポイントなのだと思うんですが、ワタクシ個人的な思うとこだと特撮モノで深い設定まで理解しようと思ったことがないので、分からなければ割り切って知らんぷりすれば良い気だけがします。現にワタクシはそんな感じで鑑賞したので。

ただストーリー自体は結構シンプル

実際、最終的にまとめてみれば、内容的にもそこまで大それたことのない浜辺美波演じる緑川ルリ子とその周辺の家族争いが主なので、SNSで言われてるような小難しさは感じず、それどころか今までのユニバースよりも遥かに物語がシンプルに感じたのも個人的な本音です。

セリフで回りくどくするのはきっと庵野秀明監督の個性なんだろうと思いますが、以前も書いた通り、ワタクシは庵野秀明監督のアニメ作品(エヴァなど)をちゃんと観たことがないので、その点について断定はしませんし、あくまでワタクシ個人の意見なんですけど。

あわよくばもっと一般人を助けて欲しかった

家族争いが中心のミニマムな物語なので、「ショッカー軍団のやってること結構ショボくない?」とか「一般人全く出てこないな」とかチラッと思いました。

とはいえ、例えば昨年アマプラで配信された『仮面ライダーBLACK SUN』みたいに、“怪人集団=日本赤軍、悪の軍団(ゴルゴム)=旧安倍政権”みたいな、製作陣のリベラル思想がめちゃくちゃ露骨なのも正直引いたので、裏返してみれば本作くらいが安牌だった気もします。*1

そういう闇落ち動機の弱さもオマージュなのかもしれませんが、とにかくトリッキーなアングルの忙しさと戦闘シーンのカッコ良さで元は取れたような気もします。あわよくば、と思う点はやはり「一般人を助けるヒーローとして格あるべき姿が観たかったな」ってくらいです。

関連作

osugimura-kon.net

*1:そもそも特撮シリーズほぼすべてにおいて、「悪の軍団は結局何がやりたかったんだ…?」と思うことがほとんどなので。