おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ウォーターワールド (1995)』【70/100点: 海が舞台の『マッドマックス2』】

全世界が水没してしまった世界で、1匹狼の主人公マリナーと女性ヘレン、クソ生意気なガキンチョのエノーラが、海に沈んだ地球上に唯一あるとされる地上「ドライランド」を目指す、ただそれだけ。

ちょっと年季の入った映画好きなら一発で「それ『マッドマックス2』と同じ話じゃん」と気が付いてしまう内容なんですが、金は(無駄に)かかっているだけあって水上の追いかけっこは抜群の迫力があります。

【ネタバレなし】

お話

環境破壊の末に海で覆われた未来世界。人類はアトールと呼ばれる浮遊都市の上で生き延びていた。ある日、一匹狼の男・マリナーが謎の少女・エノーラと義母のヘレンの住むアトールにやってくる。3人は凶悪な海賊集団・スモーカーズとの戦いに巻き込まれ…。(Filmarksより)

ユニバーサル・スタジオが本気出した映画

本作の公開と前後して、アメリカのテーマパーク“ユニバーサルスタジオ・ハリウッド"にアトラクションがタイアップで出来たことに加えて、公開当時だと製作費も世界最高のバジェットになったことで鳴り物入りで公開された映画だったようです。その割に、損益分岐的な部分は如実に肩透かしで天下の映画会社ユニバーサル・スタジオをヒヤヒヤさせて映画なのだそうです。

駄作ではないが傑作でもない

「駄作なのか?」と言われるとワタクシ的にはそうは思わないのですが、一方で同じ1995年公開『トイ・ストーリー』の6倍にも及ぶ2億ドル近い製作費を掛けるほどの内容だったのかというと、「いやいや絶対にそんなワケないだろ」と思ってしまうB級感が極まる内容です。

滲み出てくるような泥臭さとか、どう見ても命がけで撮影している点は本家『マッドマックス2』の色褪せない魅力なワケで、こういう部分もありワタクシは本作を劣化版『マッドマックス2』として観ています。

アクションシーンの山場が間違っているのでは?

実はワタクシ的に一番指摘をしたい、物語構成上でずっと気になっている点が。それは本作で前述した3人が「ドライランド」を目指すキッカケとなる水上要塞“アトール”の襲撃シーンで、このシーンに関してはワタクシ的に「文句なし!」と太鼓判を押したいくらいの大迫力なのです…が、この“アトール”襲撃シーンはランタイムの中だと中盤ちょっと前だったと思いますが、“アトール”襲撃以降でこのシーンに匹敵するような迫力に満ちたアクションシーンがないのです。

ラストの廃タンカーでのバトルもまあまあ迫力はあるものの、“アトール”襲撃シーンがあまりにも上出来な為、どう見ても見劣りをしてしまっております。どうせならラストのタンカーの場面と“アトール”の場面をそっくりテレコしてしまえば、もっと構成上バランス良かったのでは、と正直思うのです。*1

暴君ケビン・コスナーだったらしい撮影の舞台裏

本作の製作費が2億ドル近くまで膨れ上がった理由も、映像面でのリアリティを求めて実際の海の撮影をする、というプロデューサーも兼ねていたケヴィン・コスナーの拘りだったみたいなのですが、しかし「海での撮影は大変」というエピソードは色んな映画裏話で四六時中上がる話でもあるので、同じ轍を踏んじゃっただけなようです。

構成問題に関しても、もはやそれすらも判断出来ないくらいに現場が荒れまくってた名残りなような気がするんですが、せっかくの大迫力な場面を中盤で一気にみせてその後ダルダル展開は、というのは個人的にすんごい勿体ないなと思いました。もっと言えば、内容の薄さの割に尺が長いのも、もしかしたらそう感じる原因なのかもしれません。

前述の通りですが、「そこまでしてリアリティが必要なのかなあ?」と思う内容の映画なので、どうせなら荒野の公道とかでやれば良かったのに、なんてワタクシは思います。

あ、それじゃ『マッドマックス2』か…。

*1:ちなみに、ショー・アトラクション版『ウォーターワールド』も“アトール”が舞台だったりもします。