おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ヒルコ/妖怪ハンター (1991)』【75/100点: 中高生向け『学校の怪談』】

40歳を超えて少し今のようなふてぶてしい貫禄が出始めた頃のジュリーと、工藤夕貴の弟がダブル主演した田舎の学園が舞台のSFホラー。

話は意味わからんけど不思議で面白い映画だったボディホラー『鉄男』が評価された塚本晋也監督初のメジャー映画会社配給の映画で、勢いのまま矢継ぎ早に出てくるグチャドロ感は本作でも健在。それまで二枚目な役柄ばっかりだったジュリーがビビりのヘタレを演じたことも話題になったという一作です。

【ネタバレなし】

お話

新進気鋭の考古学者・稗田礼二郎は学界で注目を集めていたが、ある学説を唱えたことで異端視され、その存在はほとんど忘れ去られていた。そんな彼のもとに、義兄で中学校教師の八部高史から「古代人が悪霊を鎮めるために造った古墳を発見した」という内容の手紙が届く。自分の学説が証明されると考えた稗田は八部の家を訪ねるが、八部は生徒の月島令子とともに謎の失踪を遂げていた。2人を捜すため学校へ向かった稗田と八部の息子まさおの前に、恐ろしい妖怪ヒルコが出現。妖怪退治の武器を手に立ち向かう稗田たちだったが……。(映画.comより)

話は定番ジュブナイル物×グロホラー

舞台は片田舎で若干ジュブナイル物の要素もある為、特に冒頭は塚本晋也の映画とは思えないくらい牧歌的なので、「これは『学校の怪談』的なヌルい子供向けホラーか」と思ってしまうものの、肝心の怪奇が始まるとまあ~ハードの描写ばっかりで凄い。

学園ホラー的な緩いノリの中で血みどろだわ、首は飛ぶわとやりたい放題なので、「塚本監督の作家性ってこういうところなんだっけ」と若干戸惑いはするものの、ストーリーが進めば進むほど話のスケールもデカくなっていくのでここら辺が面白かったです。

ヒルコ」のデザインが秀逸

何より寄生生物(?)のヒルコが異様に気持ち悪い造形なのもプラスポイントで、生首に足が生えてウニョウニョ動く『遊星からの物体X』風の怪物がグロ可愛いのです。デザインは本作以後の塚本作品や『平成ガメラ』シリーズ等の織田尚さんとのことで、後の活躍も頷ける秀逸なデザインで非常に良いです。

ラスト付近のヒルコが連隊で移動音に気が付く場面なんてまあカッコイイこと。個人的にこの頃のホラーや特撮作品の手作り感ってワタクシ大好きなので、見事に琴線に触れる描写ばかりでした。

塚本監督はこういうホラーも出来る、という発見

ジュリーと工藤弟のバディ感もまた良くって、割とハードな描写の中で2人がユーモラスな掛け合いをするのが結構おかしく、終始飽きさせない雰囲気作りの上手さでした。塚本監督の作品って人間味が薄目の人が主人公になっている印象が個人的にあるんですが、こういう芸当も持ってらっしゃるんですね。こういうエンタメゴリゴリの塚本晋也作品、もっと観てみたいなんて思ったりも。まあ最近は作家性バリバリの映画ばかり撮っているのでそれは望み薄か。

塚本晋也作品、ってだけで軽いノリで観た映画でしたが、学園モノでも紛れもない塚本作品だった、ということで新しい発見でした。『鉄男』シリーズと比べたらまあ大人しい映画ではあったものの、脇役に室田日出男光石研余貴美子が登場してくる等、本筋と関係ないところでもそれなりに見応えあったので概ね満足な映画ですね。