おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『アイズ ワイド シャット (1999)』【80/100点: 恐怖の乱交パーティ】

10代の多感な時期にエr…いや、情操教育として観た一作です。当時のワタクシとしては、前述の情操教育も含めてすんごいつまんない印象の映画だったのですが、今思えばシンプルに観るのが早すぎたような気もします。

【ネタバレなし】

お話

ニューヨークで暮らす内科医ウィリアム(ビル)は、結婚9年目となる美しい妻アリスや6歳の娘とともに何不自由ない生活を送っていた。ある夜、ウィリアムは妻から、家族旅行中に他の男に性的欲求を感じたことを告白され激しい衝撃を受ける。性の妄想に取りつかれながら深夜の街をさまよい歩く彼は、ニューヨーク郊外の館で行われている秘密のパーティに足を踏み入れるが……。(映画.comより)

大人気ない主人公

話としては、当時実際の夫婦だったトム・クルーズニコール・キッドマン演じるハーフォード夫妻の倦怠期における男女関係の揺らぎを描いた内容。トム演じるビルが痴話喧嘩の果てに「妻(ニコール)があんなに男たぶらかすんだったら俺だって不倫しちゃうんだもんね!」と、だいぶ大人気ないことを延々と悶々する感じの内容です。

ストーリーだけ一見すると、名匠スタンリー・キューブリック監督作品と分からないくらいの大変ミニマムなお話なんですが、全編に渡って繰り広げられるエグいくらいのブラックな展開は思いっきりキューブリック節です。

エロいけど品がある

一応、R-18ってことで過激な場面はちょいちょいありますが、キューブリック監督特有の神経質な雰囲気のカメラワークや絵作りもあり、かなり品のある映画になっています。そもそも、改めて今鑑賞するとストーリーも結構面白いです。

「夢」か「現実」か

トムが延々と悶々する映画には変わりないのですが、割と序盤の時点で「夢か現実か」みたいなことが示唆されている内容になっており、例えばストーリー上2回登場するパーティ衣装レンタル屋のミリチに至っては登場ごとに性格が真逆になっております。*1

鑑賞している側が煙にまかれている感覚は『シャイニング』とかなり似ているので、『シャイニング』が好きな人は本作も気にいる可能性も高いです。とはいえ、旦那が延々と妄想を繰り広げるたったそれだけの内容にも関わらず本編尺が2時間半超えという異様な長さなので、若干飽きが来るのも確か。

怖すぎる乱交シーン

ただ、中盤にある乱交パーティの場面は、並のホラー映画でも勝てないような強烈な不気味さなので、この場面だけでも一見の価値ありです。とある秘密結社の儀式を再現したというまことしやかな噂もあるシーンで、「この場面があったことでキューブリックは暗殺された」みたいな都市伝説も存在しているんですが、その都市伝説すら妙に信憑性も感じるような怖さがある場面です。

そういう点で考えると、タイトルの「Eyes Wide Shut(目を大きく閉じろ)」の意味も、解釈としては「いらんことに首突っ込むな」とも捉えられるので、なかなか深いタイトルだなとワタクシ個人的には思いました。

要は全然エロくない映画なので、エロ目的で本作を観る人がもし居るとしたら止めた方が良いです。だって、ワタクシ的にはとにかく怖い映画なんだもん本作は。

*1:どの場面に至っても「どれが妄想なのか」というアンサーは一切ないんですが。