おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『恋の罪 (2011)』【35/100点: 園子温の性癖】

ワタクシよく覚えているんですが、今からおよそ10年程前(大震災前後)の時に、園子温監督を過剰に持ち上げる風潮ってのが確かにあって、ワタクシ自体は『冷たい熱帯魚』以外は大してハマらなかったんですが、主に鑑賞本数が自慢だった当時の映画フリークの皆さまは大概「好きな映画」を聞かれると高確率で園子温作品が入っていました。

本作も例外なく、その当時に公開された映画となります。特に映画●宝などで大絶賛の映画でしたが、ワタクシ的には正直「どう見たらええねん」って映画です。

【ネタバレなし】

お話

21世紀直前に起こった、東京・渋谷区円山町のラブホテル街で1人の女性が死亡した事件を軸に、過酷な仕事と日常の間でバランスを保つため愛人を作り葛藤(かっとう)する刑事、昼は大学で教え子に、夜は街で体を売る大学助教授、ささいなことから道を踏み外す平凡な主婦の3人の女の生きざまを描く。

素直にドキュメント的にやれば良いのに

本作の元ネタは、東電総合職のキャリアウーマンが、夜の世界で実は売春に手を染めていて、その上で何者かに殺されちゃった未解決事件「東電OL殺人事件」。この事件なんですが、ドストレートに映画化すれば抜群に面白かったであろう内容*1なんですが、園子温監督は敢えてそんなことはせず、あろうことか自分の性癖の多くを映画にブチ込んでしまったのです。

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ワンマン監督の性癖が見え隠れしている

実はワタクシ、本作を公開当時映画館で鑑賞しておりますが、あんまり面白くなかった上に、上記の「もしやこれ、性癖なのでは…?」という部分で非常にモヤモヤしていたのですが、一昨年に報道された園子温の一連のセクハラ・パワハラ騒動をメディアで見てて、やっぱりな、と思ったモノです。

というワケで、東電OL殺人事件が元ネタ、という口実の中で、自身のエロ妄想で大きくなった園子温のチ●ポを延々と見せつけられる、みたいな気色悪い映像が連発します。

本作で哲学的なセリフいりますか?

加えて、園子温作品の悪い部分である、哲学的なセリフを敢えて俳優の口から言わせる、という共感性羞恥を感じてしまいそうな俳優の演技づけもなかなかキツい。たぶん園監督は舞台劇の演技と映画の演技というモノを線引き出来ていなかったんだろうな、とワタクシ的に思います。*2

冷たい熱帯魚』が良かっただけに

本作から数えると1個前の作品にあたる『冷たい熱帯魚』は普通に秀逸な作品だっただけに、当時のワタクシのガックリ感は凄まじかったのですが、その感想は改めて鑑賞しても一緒でした。前にも思ったんですが、園監督は人の脚本で映画撮った方が良いんじゃないかと思います。

単純に、事実を基にしているはずの映画なのに悪ノリが過ぎるんですよ、この映画は。「女性の裸を出すことがアート、俳優に小難しいこと言わせるのが作家性」ってんなら、それはあまりにも稚拙な表現なんじゃないかな、と個人的には思います。

*1:故人には申し訳ないですが

*2:比較的評判の良い園子温の映画である『愛のむきだし』も、ワタクシ的のこの点が鼻についてあんまり好きではないという部分もあります。