おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『Winny (2023)』【90/100点: クセ者プログラマーに翻弄される弁護士団】

実話を基にした映画とのことですが、地味になりそうな題材を超胸がアツくなる内容でまとめてる、邦画としてなら近年随一の傑作だと思います。色々あった東出くんの主演作ですが、東出くんに関しても少なくともこれまでの出演作の中ならば、ほぼベストワークと呼んで良いであろう名演を披露していたんじゃないでしょうか。

【ネタバレあり】

お話

2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフトWinny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。

違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。(映画.comより)

確かに何で逮捕されたのかよく分からない事件

天才プログラマー金子勇が構築したファイル共有サービス“Winny”の存在により発生した数々の違法ダウンロード犯罪、通称「Winny事件」で逮捕された金子勇と弁護士団による逮捕勾留から足掛け7年にも及ぶ裁判を追ったお話で、裁判渦中の金子勇東出昌大が演じております。

金子勇が逮捕された理由も、便宜上は著作権法違反幇助となっているものの、「ナイフで刺殺事件があったら加害者は当然罪に問えるが、ナイフそのものを作った人を罪に問えるか?」と劇中冒頭でも言われてる通り、確かに金子勇の逮捕自体が倫理的に矛盾しているので、金子勇の弁護士団がその点を突いて検察と原告の警察に徹底抗戦をするというワケですね。

検察よりも原告本人の方がクセモノ

んで面白いのが、金子勇自体がなかなかのクセ者という点で、プログラミングへの異常な執着心を待ったゴリゴリ理系の天才肌ってのもあってか結構社会性が欠けており、冒頭時点だと人を疑うことを知らないかのようなピュアな猪突猛進っぷりです。

その性格が災いしてか、裁判までにおける金子勇自身の落ち度も同然ながらあって、大きいところだと「画期的なファイル共有ソフトなのに何故かベータ版を2ちゃんねるで宣伝し普及させてしまった」「虚実綯い交ぜの捜査調書に署名しまくってしまった」など、冒頭時点だとかなりボロボロの状態。言うまでもなくだいぶ詰んでいます。

裁判で天才は報われるか、裁かれるのか

その上で「この違法ダウンロード問題ってちょっとプログラムいじれば解決できるんですよ〜」みたいな、いやいやアナタの裁判でしょ!って思ってしまう他人行儀なので、弁護士チームもかなり手を焼く状態になります。

裁判における一番の壁は検察じゃなくて金子勇その人、的な。この状態から徐々に一体感を持つようになる感じはすごく面白かったですね。

事件そのものを知らなくても楽しめる

Winny事件自体は、実際の渦中の時期はワタクシが中高の頃だったので正直全然知らないんですが、知らない人にも配慮されたよく出来た構成だったと思います。尚、本作の松本優作監督はワタクシとほぼ同年代らしいんですが、そう言う意味でもすごい優秀な監督ですね。今後に期待したい次第です。

ということで、何となく観に行ったら桁違いに面白かった掘り出し物のような映画で、ケチをつけるのが難しいくらいに良く出来てました。

東出昌大の復活作と言っても語弊ないでしょう。