イケメン教師が実はサイコパスの大量殺人鬼、というサイコホラー。バイオレンス映画が大好きなワタクシとしては、学校が舞台のバイオレンス映画ってことで『バトル・ロワイアル』を思い起こすイメージで、映画館での鑑賞時には期待にドキがムネムネしたのなんの。
『黒い家』*1の貴志祐介の同名小説を映画化した映画で、生徒の設定や顛末など細かいディテール部分が結構異なることや、数人の登場人物が登場しない点を除けば、概ねは原作通りの展開をします。
【ネタバレなし】
生徒から慕われ、学校やPTAからの評価も高い高校教師・蓮実聖司は、教師の鑑ともいうべき表向きの顔とは別に、他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)という隠された顔があった。
いじめ、モンスターペアレンツ、セクハラ、淫行など問題だらけの学校で、自らの目的を達するため、蓮実は躊躇なく殺人を繰り返していく。しかしある日、ほんのささいなミスを犯してしまった蓮実は、それを隠匿するためクラスの生徒全員を惨殺することを決める。(映画.comより)
青春ドラマを装ったバイオレンス映画
高学歴で前職は銀行員、社会人時代に海外滞在経験あり、生徒からも同僚の先生からの信頼の厚いというイケメン教師・蓮見が担任をする都内のとある高校が舞台。
そんな全盛り設定の蓮見先生ですが、実は幼少期から他者への共感能力が著しく欠けた殺人鬼で、この高校関連の殺人事件が蓮見が関与していることに気が付いた二階堂ふみ演じる伶花や染谷将太演じる早水が探偵ゴッコ的に真相を追い求める、って感じの話です。
伊藤英明随一の名演
蓮見先生役は伊藤英明で、ワタクシは高校くらいの時の『海猿』出演時から貼り付いたような笑顔が気になっていたのですが、本作はそんな「貼り付いたような笑顔」をフル活用し、サイコパス殺人鬼を怪演。
これが2010年代にワタクシが観た映画の中でも上位にしたい、近年でも随一のハマリを見せた悪役だと思います。殺戮シーンの瞳孔が開きまくったアノ眼力たるや、まさしく“みたことない伊藤英明”って感じでした。
”バイオレンスの巨匠”三池崇史
そんな悪魔的が満々な蓮見先生が静かに大暴れする内容になっており、邦画バイオレンスの巨匠・三池崇史監督の持ち味を生かした暴力的なスリラーになっております。
ちなみに原作にはチラホラとエロ要素があるのですが、年齢指定との兼ね合いもあってか、この映画では大人な描写は匂わせ程度に割愛されています。それがかえって蓮見の暴力的な一面を強調する構成になっており、ワタクシ的には性的描写の削除は良い選択だったんじゃないかと思います。
ただし薄口の三池崇史
ただ、本作を映画館を鑑賞した約10年ほど前の時点で、三池監督のタガが外れたようなバイオレンス映画を何本も観ていたワタクシ的には「だいぶ薄口の三池崇史だな」と思ったのも本音です。公開当時も「三池さんならもっと暴れられたんじゃない?」と感じましたが、この間観なおした時も同じようなことを思いました。*2
まあ舞台設定が高校だし、あまりに暴力描写頑張り過ぎちゃうと下手したら社会問題になっちゃうので、ある程度モラルを線引きした結果もあるのでしょう。そういうワケで、投球練習中の三池崇史って感じの映画ではありますが、それでも個人的には普通に面白いバイオレンススリラーだと思います。
*1:映画化版での大竹しのぶの怪演「乳しゃぶれ」シーンでおなじみですね。
*2:『首』の完成披露会見で北野武監督も言ってましたが、三池監督の映画って基本的に品がないんです。