おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ゴールド・ボーイ (2024)』【75/100点: イキりサイコパスVSマセガキ】

DEATH NOTE デスノート』シリーズの金子修介監督による、サイコパスの連続殺人犯と悪ガキたちの心理戦を描いたサスペンス映画。主演は岡田将生で、対峙する悪ガキを羽村仁成くんが演じています。両者ともにかなり腹の立つ人間を演じており、性悪同士が心理的なバトルを行っていく展開は面白かったです。

ただ、展開の流れとして、羽村くん演じる朝陽の離婚した父母の行く末がなんか結構不憫に感じてしまったので、後述の内容含めて少年側の「何だコイツ感」が少し気になってしまいました。まあ少年とて、サイコパスってそういうモンなのかもしれないけど。そんな部分は感じてしまいましたが、サスペンススリラーとしては近年の邦画でも出色の傑作な気がします。

【ネタバレなし】

お話

実業家の婿養子である東昇は、ある目的のため、義理の両親を崖の上から突き落として殺害する。それは完全犯罪のはずだったが、3人の少年少女がその現場を偶然にもカメラでとらえてしまう。それぞれ複雑な家庭環境や家族の問題を抱える少年たちは、東を脅迫して大金を手に入れようと画策するが……。(映画.comより)

サイコパスとマセガキの対決

話の始まりは、岡田将生演じる東昇が義父母を崖から突き落とすところから始まり、朝陽少年含む3人が海岸でワチャワチャ遊んでいたら、偶然に昇が義父母を崖から突き落とすところをカメラで撮影してしまいます。

昇が婿養子に入っている東家は、地元沖縄の地主的な存在で、少年少女たちも当たり前のように知っている地元の長なので、「殺人映像をダシに婿養子を脅せば金になるんじゃ」と思った朝陽少年と仲間たちは、早速そんな命がけの恐喝を実行してしまいます。とはいえ、昇も筋金入りのサイコパスということもあり、一枚も二枚も上手で…なんてのが本作のお話です。

話はかなり良く出来ている

サイコパスが題材とはいえ、三池崇史の映画みたいに人外レベルでネジが外れた感じの人は登場せず、それなりに上品な雰囲気の映画になっており、劇中ドンデン返し的な展開も何回かあるので全く飽きがこない映画です。

とにかく悪ガキとサイコパス青年のバトルはかなり激アツで、「どちらがどうやってダシ抜くんだろう」と率直に思ってしまうストーリーの巧みさは、サスペンスのお手本って感じです。

青春映画要素もある

サスペンスの中繰り広げられる朝陽少年と女の子の夏月の、中学生らしいプラトニックラブ的な内容も面白かったです。「美少女映画に定評がある」という名誉なのか不名誉なのか良く分からない定評を持っている金子修介監督だけに、嫌味のない一夏の青春っぷりはサスペンスともちゃんと絡み合っていました。

さすがは『学校の怪談3』にて、少女時代の前田亜季を撮るのが上手すぎて、当時鼻タレ小僧だったワタクシに人生で初めての「キュン」を植え付けてしまった金子修介監督です。

少年側が少しブレているように感じた

とはいえ、少年少女たちの殺害するタイミングを今か今かと待っている岡田将生演じる昇のジャッカル人間っぷりと比べると、朝陽少年が割と衝動で動いてるフシを若干感じてしまったのも本音で、「コイツ、イキっている割にそんなに考えて行動してないんじゃ」みたいなことも思ってしまいました。物語の流れに関しても、要は「朝陽少年の方がサイコパスでした~」的な話の流れにはなっているものの、何か前述の一夏の青春的な展開もあってか、鑑賞後の何とも言えないモヤモヤ感はちょっと気になる部分でした。

とはいえ、その点はあくまでワタクシの私見なだけで、サスペンスとしては近年の邦画のなかでも出色でストーリーが上手く感じたので、東野圭吾的なサスペンス映画を観たい人には胸を張ってオススメ出来る映画です。

そうだ、本作の既視感は東野圭吾の小説だ。