おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン (2023)』【80/100点: お金持ちは狙われる】

最近異様に存在感を見せているAppleのオリジナル映画なのですが、Appleマネーの潤沢さもあるのかまさかの劇場公開(しかもIMAX上映)ということで観てきました。本編尺が『アラビアのロレンス』級の3時間半ということで、鑑賞後はさすがに「痔?」って思うくらい尻が痛かったですが、内容は面白かったです。まあ本音としては長く感じたのも事実ですけど。なにせ尺が3時間半ですからね!

【ネタバレなし】

お話

内容は、オクラホマ州ネイティブ・アメリカンのオセージ族の土地に石油が出たことで、石油利権の奪取を目論む白人と突如大金持ちになった先住民の交流、それで浮かび上がる人種差別、そして発生していく保険金目当ての連続殺人を描いた物語で、3時間半たっぷり陰惨な内容です。

尺の長さもあり、前半はレオ演じるアーネストのピカレスクロマン、後半はサスペンスと結構な大盤振る舞いという構成の映画になっており、終始で手に汗握る内容になっています。

新旧クズ対決

本作の主人公となるアーネストなんですが、これがとんでもないクズなのです。オセージ族の妻がいるものの実態はオイルマネーに目が眩んだ人。デニーロが演じているアーネストの叔父ヘイルもこれまたオイルマネーの特需で大儲けをした人物で、表面上は好々爺を装いつつ、実はオセージ族の命を簡単に奪ってしまう若干サイコパス寄りな役柄。アーネストはヘイルに全く頭が上がらず、気がついたら連続殺人犯になってた的なノリです。

久々のレオとデニーロの共演ということで、新旧演技派俳優2人の堂に入ったガチクズっぷりは最高でした。

また、アーネストの妻モリーを演じるリリー・グラッドストーンの熱演も見事で、夫以外の白人を信用出来ず憔悴し切るものの、実は夫自体が連続殺人の犯人だったというかなり難しい役柄を演じていました。普段は寡黙な女性ながら、吐き出すように泣き出す場面はすごく迫力があります。

率直に言うと長い長い映画です

金脈を見つけて根こそぎ奪い去るという、アメリカの歴史そのもののようなお話で、あまりにもオセージ族の命の価値が安いので若干ホラーのようにも思えました。主人公アーネストが自分の愚かさに気がつくのは妻と家族を含むすべてを失った後で、当然ながら時すでに遅しということです。

なので後半以降のアーネストが贖罪の気持ちを持つ展開は、同じくスコセッシ監督の前作『アイリッシュマン』とだいぶ似ております。とはいえ、『アイリッシュマン』の全編キレキレみたいな雰囲気は無く、常に重々しいので3時間半は若干長く感じてしまいました。

ただお話自体は結構面白いので、全編飽きずに観ることが出来ました。元になった時間も興味が出てきたので、本屋で原作も購入してこれから読んでみようと思います。