おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ヒッチャー (1986)』【90/100点: 人外の怖すぎる追跡】

初代『ターミネーター』の影響下で出来た鬼ごっこ型のサスペンススリラーなのですが、物語進行が上手すぎてまさかの本家よりも面白くなってしまった奇跡の一作です。『ブレードランナー』でお馴染み、オランダの名優ルトガー・ハウアー演じる圧倒的存在感のサディストっぷりが素晴らしく、その常軌を逸した発言の数々や行動原理の意味不明さが見どころになっています。

幽霊などの怪奇が登場しない映画ながら、本作の恐怖演出は並のホラー映画をも凌駕しており、90分というちょうど良いランタイムを相まって全編が異常な緊張感に満ちている大変優秀なスリラーになっています。

【ネタバレなし】

お話

陸送の仕事をするジム・ハルジーは、シカゴからサンディエゴへと向かう砂漠地帯で、1人のヒッチハイカーを拾う。その男ジョン・ライダーは、ハンドルを握るジムの喉元にナイフを突きつける。一瞬の隙を見てライダーを車から突き落としたものの、その後も彼は執拗にジムを付け狙う。警察やウェイトレスのナッシュも巻き込み、事態は最悪の方向へと転がっていく。(映画.comより)

スリル・ショック・サスペンス

偶然乗せたヒッチハイカーが乗車ののっけから「お前を殺して俺も死ぬんだ」と発言するようなヤバい人で、命の危険を感じた主人公のジムはそのヒッチハイカーであるジョン・ライダーと名乗る男を(文字通り)車からつまみ出すのですが、そこからジョンはしつこくジムを追いかけ殺そうとします。

本作の悪役であるジョン・ライダーなのですが、ジムを付け回す理由が明かされることは本編中には無く、ジムを助けようとした人を1人残らず殺そうとしたりとかやっていることが意味不明で、「死にたい」と言ってる割に悪魔レベルのサディストです。存在自体が惨虐な人間そのもので、出会ったが最後なまさにサイコパスな人物となっています。

マジで巻き込まれただけの主人公

ジムも特に何もやってない一般人なこともあり、不条理な展開になっていますが、そのおかげでジョン・ライダーという人物の異様な存在感が際立っています。

ジョンは基本的に神出鬼没で、ジムが追跡を振り切ったと思い込んで「やったー!」となっていた瞬間に現れたり、隠れ家にいつの間にか居たりとか、もはや人外レベルの登場もチラホラあって怖すぎるワケです。全編で流れる不協和音みたいな音楽もそれを盛り上げており、落ち着く瞬間が一切無いのが良すぎます。

現代に通ずる怖さ

ってことで、カルト的人気で有名な『ヒッチャー』なのですが、ストーリーのシンプルな面白さとジョン・ライダーという怖すぎる悪役の存在が秀逸な一作です。

ちなみに、映画.comの紹介ページに「大ヒットを記録した」という嘘っぱち*1が書かれているものの、実際は一般的には知られてないカルト映画ではありますが、今だからこそジョンの異様さや不気味さにリアリティが増している印象で、おそらくどの世代でも楽しめるサスペンス映画なんじゃないでしょうか。傑作です。

*1:公開時は『激突!』の劣化コピーとか散々な評価をされ大コケしてます