おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『パレード (2024)』【80/100点: 長澤まさみの「大霊界」】

人は死んだらどうなるか、という人として究極の疑問を映画化した作品で、主演は最近さらに活躍著しい長澤まさみ

ワタクシ個人的に「志半ばで…」みたいな感じで死にたくない(長生きしたい)と色んな人によく言っており、とはいえ万が一ワタクシが急逝した場合は「アレやりたかったのに!」と速攻化けて出るんじゃないかと自己分析している部分もあって、そのような点から本作の内容には若干共感要素もあった気がします。

【ネタバレ若干あり】

お話

瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子。離ればなれになったひとり息子の良を捜す彼女は、道中でアキラという青年や元ヤクザの勝利、元映画プロデューサーのマイケルらと出会い、やがて自分がすでに亡くなっていること、未練を残して世を去ったため、まだ“その先”に行くことができずにいることを知る。

そしてアキラたちもまた、さまざまな理由でこの世界にとどまっていた。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を捜すパレードに参加したことをきっかけに、少しずつ心が変化していく。(映画.comより)

廃園は三途の川

大災害の後に瓦礫だらけの海岸で目を覚ましたシングルマザーの美奈子が、居なくなった息子を探して彷徨っていると社会人サークル的なコミュニティに辿り着き、浜辺で目覚めてから感じていた違和感の原因は実は自分が死んでいるからだと知ります。

劇中では明言されていないんですが、この“死者コミュニティ”はいわゆる三途の川的な場所のようで、「現世でのやり残しが解決しないと“先”に行けない」というルールがあるんだそうです。そんな世界観の中、美奈子は戸惑いながらもその“コミュニティ”メンバーのやり残しを解決し、美奈子と同じく災害時に居なくなった息子を探して求めます。

お寺の説法のような話

あらすじだけでも坊さんの説法みたいな話なんですが、本作の舞台となる潰れた遊園地みたいな場所は、前述の三途の川的な場所らしいです。「津波」や「原発」のワードやニュース映像が出てくるので、割と直球で東日本大震災後の世界観になっており、話が進むにつれて美奈子の息子は生き残っていることが分かるものの、よくよく考えれば美奈子の息子は震災孤児なので、かなり悲しい状況なんですね。

というワケで、「そりゃ未練も残っちゃうよね」という話なんですが、安定感のある演技力で長澤まさみが”死者”を見事に演じています。また、周りを固める”死者”も演技派揃いで、それぞれの思い残しを解決していく形で話が進みます。特に横浜流星のヤクザのエピソードはかなりジーンとくるモノがあり、この一遍だけでも満足感がありました。つくづくワタクシはヤクザ人情系の話には弱いな、と。

サイドストーリーのツメは若干甘い

まあ、リリー・フランキーが演じる映画プロデューサー(おそらくモデルは一昨年急逝した河村光庸)が作ろうとしている映画が「学生運動上がりの男の50年近くの半生と恋物語」という、正直「誰が観るんだそんなモン」という内容だったり、森七菜演じるナナの後日談がかなりご都合主義(生きてたんかい!)で取ってつけた感があったりなど、気になるところがあったのも事実ですが、作品全体に感じる何とも言えない優しさが、ワタクシ的には「良いね」と感じた部分でした。

マジメな『大霊界

そんな感じで、丹波哲郎の『大霊界』シリーズをクソマジメにやったような内容でしたが、個人的には思っていたよりも面白かったです。ワタクシは改めて全力で長生きして、悔いが残らないように生き抜きたいな、なんて思ってしまいました。