おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 (2023)』【85/100点: 残酷ミステリーホラー】

普段ほとんどアニメを観ない為、何となく鑑賞枠から外していたのですが、久々に力を入れて家の大掃除をしていたら10数年前にブックオフで買った水木しげる漫画が大量に見つかったのと、Xでスワイプする度に毎度名前を見かけえらく高評判だったので今回鑑賞。

実はU-NEXTで溜まってた月イチの付与ポイントを使って新宿バルト9で鑑賞したので実質無料だったのですが、ここまで見逃していたのを後悔してしまうくらいの、あらゆる映画ジャンルを超越する濃厚なドラマでした。

【ネタバレなし】

お話

昭和31年。鬼太郎の父であるかつての目玉おやじは、行方不明の妻を捜して哭倉村へやって来る。その村は、日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族が支配していた。血液銀行に勤める水木は、一族の当主の死の弔いを建前に密命を背負って村を訪れ、鬼太郎の父と出会う。当主の後継をめぐって醜い争いが繰り広げられる中、村の神社で一族の者が惨殺される事件が発生。それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりだった。(映画.comより)

ジャンルを超えるストーリー

田舎の資産家一家の遺産相続争いで起こる連続殺人を、“ゲゲ郎”と呼ばれる鬼太郎の父と、上席に顔を売りに来たサラリーマン水木が、ことの成り行きでバディを組み解決していくミステリー。序盤の内容はもろに横溝正史の小説タッチで、連続殺人の原因である遺言書を読む龍賀一家専属弁護士が、市川崑の『犬神家の一族』の小沢栄太郎にソックリなのは笑いました。殊更強調理由がないのに何度か不気味にインサートされる甲冑は野村芳太郎版『八つ墓村』のオマージュでしょう。

こんな感じで年季の入った映画ファン向けの、邦画作品へのオマージュが何回かあるんですが、この点がまず楽しめました。横溝正史調で始まりつつ、中盤の不条理展開は洋ドラ『ツイン・ピークス』風、終盤はほとんど『AKIRA』風と、ジャンルの垣根をドンドン超える小気味良い展開が面白いのは勿論、ワタクシ的に何なら気持ち良かったです。

根底の話はドロドロ

ストーリーに関してはミステリー調とは言え、意表を突くくらいドロドロ。ストーリーを追うと性的虐待の話であったり等、現代的なテーマも出てくるのがなかなか強烈。東映がPG-12指定にしてまでもダークな内容を貫き通した気概を感じました。アツいバトルはあるものの、ラストも救いがあるとは言い難いオチになっているので、ここも東映アニメの本気度を感じて胸アツ。

ゲゲゲの鬼太郎』エピソード0

ゲゲゲの鬼太郎』のエピソード0的な映画でもあるので、その後の展開も何となく感じさせるのもアツい。本編中は序盤と終盤しか出てこない鬼太郎と目玉のおやじ、猫娘の出てくる場所もこれ以上無いくらい適材適所なのです。本作は「単作で楽しめますよ〜」という内容になっているものの、ここら辺の上手い作りも良かったです。

ゲゲゲの鬼太郎』が題材でだいぶ軽くは見たもののかなり大人に内容だったので、良い映画感見た感もマシマシでした。本作の“その後”を描いた連続シリーズがあれば、珍しく連続アニメもワタクシは観てしまうかもしれません。