おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ボルケーノ (1997)』【80/100点: パニックにはリーダーシップが必要】

幼少期のワタクシに映画の面白さを説いた筋金入りの映画好きであるワタクシの父親が、数ある映画の中でも「この映画が一番好き」と公言している映画がコレです。

何でよりによってこんな映画が一番好きなんだろ、というのが正直本音だったのですが、バリバリの公務員(救命士)で、且つ現場出動に拘りを持っていた父親的にはすごく刺さる映画なんですって、この映画。

【ネタバレなし】

お話

ロサンゼルス──太陽が燦々と降り注ぐ、華やかな大都会。しかしその地底では大自然の強大なエネルギーが想像を絶する驚異の瞬間を迎えようとしていた。奇妙な焼死事件の直後、その悪夢はやってきた。都会のど真ん中で、突如、火山噴火が始まったのだ!(映画ナタリーより)

監督は名作TVドラマ『スレッズ』の人

ロサンゼルスの真ん中で突如活火山活動が始まり、繁華街・住宅街にまさかの溶岩流が流出。LA崩壊の危機に、現場に直行したLA危機管理局のマイク局長が、阿鼻叫喚状態の現場に𠮟咤激励しつつ行政執行機関全てにリーダーシップを取って二次災害、三次災害を防ごうとするってな話です。

核戦争が発生したら、というifストーリーを完璧にまとめていたイギリスの名作テレビ映画『スレッズ』と同じ監督とは思えないくらい、パニック有り気のご都合主義*1な映画なのですが、とはいえ本作の魅力のおよそ80%くらいはトミー・リー・ジョーンズ演じるマイクの存在だろうと思います。

「リーダーならこう動け」という映画

トミー・リー・ジョーンズが演じているゴリゴリの現場主義役人のマイクなのですが、この人がすんごい有能なのです。大ピンチの状況でも常に冷静で、危機的状況に慌てふためいている消防士・警官・軍隊に「慌てんな。えーっと、消防士のお前はここに行って、それで警官のお前はこれやって…そういえば何か使って溶岩流を止める堤防とか作れないのか?」といった具合に、理路整然とトラブルを解決し、集団連携を構築していきます。

しかもマイクはただ指示を出しているだけでなく、例えば堰き止めで使用するバスを押す為の隊列に「よっしゃ、みんないくゾ!」と掛け声込みで参加してくれる等、口だけじゃなくてちゃんと行動もしてくれるんですね。このように、トミー演じるマイクが「リーダーシップとは何たるか」の大正解のアンサーを延々と見せてくる映画となっているワケです。故に辛気臭いラブストーリー的なモノは存在しません。これが潔い。

子供には分かりづらいお話

ワタクシの個人的な話をすると、この『ボルケーノ』って子供の頃から結構テレビでやってた映画で、10年くらい前に鑑賞して「あんま面白くねェな」と思ったのを最後に観てなかったのです。何となく、そこはかとないバカ映画感を感じた、というか。

それで30歳を超えた今、この間久々に観たら意外に結構面白かったのと、おそらく自分自身が現在いっぱしの社会人であるからか、父親の言っていること(前述)が今やっと分かりました。「なるほど、こりゃ”上司カッケー!”って映画だったのね」と。改めて鑑賞したら決してバカ映画ではないな、と思いました。

胸がアツくなる総出の攻防

マイクの流石すぎるリーダーシップぶりに行政執行機関の皆様だけでなく、現場にいた一般市民から、果ては犯罪者に至るまでが協力し始めるという、アノ三銃士ですら「すみません、負けました」と言ってしまうであろう激アツな“One for all”の世界観になっており、そのくらいマイクの求心力が凄まじいのです。このリーダーシップ論、組織論は社会人にならないと理解できない部分なので、「そりゃバイトしかしてない10年前なら分かんねェわ」って感じでした。

「渋い映画」

「街中でマグマ噴出」みたいなかなり派手な映像の割にその点は二の次で、カッコいいしごできオジサンのトミー・リー・ジョーンズを眺めるという絶妙に渋い映画なのですが、マジメに社会人やっている人にはかなり刺さる映画でしょう。

ワタクシは10数年越しに、父親が何でこの映画を好きか、が理解出来ました。マイクみたいな上司が居たら、昨今の不景気も全然苦にならないでしょうね。

まあ、滅多に居ないだろうけど。

*1:まあ、災害パニック映画だから「パニック有り気」は当たり前なんですが。