おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『テトリス (2023)』【85/100点: ゲームを売りたい男VS高圧的なソ連】

世界一有名なブロック崩しゲーム「テトリス」がゲームボーイで全世界に発売されるまでを追った内容なんですが、ヌルいお茶が熱く感じるくらい面白かったです。

昨年くらいからApple TV+が異様にオリジナル作品に力を入れてて、おそらく今後全盛期Netflixくらいの大盤振る舞いをしていきそうな勢いなんですが、そんなApple TV+の好調ぶりを感じる映画でした。

【ネタバレ若干あり】

お話

舞台は80年代、全然売れない囲碁のPC用ゲーム売っていたタロン・エガートン演じるヘンク・ロジャースが偶然見本市でプレイしたテトリスの面白さに目をつけ、勢いそのまま任天堂の山内社長*1に「このゲームめっちゃ面白いんで僕が権利元になってファミコンで売りたいんですが!どうすか!?」とプレゼン。同じタイミングに任天堂で開発されていたゲームボーイに目をつけ、「コレは金になるぞ!」とヘンクは権利取得に動きます。

ただ、テトリスソ連で出来たゲームで、当時は折しもアメリカとソ連は冷戦時代。権利取得となると“鉄のカーテン”とも呼ばれる外交問題を背負ってソ連に乗り込まなければいけないんですが、ソ連は「何で敵側のビジネスマンに売らないといけないの?」というスタンス。加えて、ソ連共産主義の為、当時既にソ連の資産となりつつあったテトリスに手をつける人はスパイと見なされる状況の中、ヘンクが悪戦苦闘しながら見事権利取得を果たすまで頑張る話になっています。

ほぼスパイ映画のサクセスストーリー

先日鑑賞してワタクシが大変感銘を受けた『AIR/エア』と結構似た販売権を勝ち取る男を描いた内容ですが、ソ連に入国して以降のヘンクはKGBの管理下に置かれ、脅迫&脅迫に晒されます。

こういう実話を基にしたお仕事映画ではあんまりない命懸けの交渉劇となるワケで、舞台がアメリカ→日本→ソ連と各国を跨いで動くこともあり、特に後半を007シリーズのような硬派なスパイ映画みたいになります。コレが面白かったですね。

硬派に見えて遊び心溢れる映像

また、本作『テトリス』は映像面がかなりエッジが効いてて、状況説明の大多数はファミコンの8bit風という拘り様なんですが、この映像がなかなか秀逸で混み合った情報量が上手いこと処理されています。

テトリス風になったカーチェイスシーンはこれまでに無い映像でビックリしましたね。

国家思想の垣根を越えた友情

ヘンクとテトリスを開発したアレクセイ・パジトノフとの思想間を超えた友情劇もアツくて、お互い「こいつ結構良いヤツだな」という感情なこともあり、そのことが原因でヘンクに対する脅迫は更に苛烈になります。

脅迫もソ連にいるヘンクだけでなく、日本に住んでるヘンクの奥さん(日本人)*2まで脅迫をされてしまいます。こんな感じで前述の通り後半はスパイスリラー風になるので、結構ハラハラする展開になっています。

ってなワケで掘り出し物みたいな良い映画でした。毎度配信の時に思う「映画館で観たかったな」と感じましたが、Apple TV+の今後にすごく期待出来る一作でした。2023年はお仕事映画のアツさがハンパないですね。

関連作

osugimura-kon.net

*1:ソックリ!

*2:ちなみに奥さん役の文音さん、長渕剛志穂美悦子の実娘だそうです。道理で目力強いと思ったら。