八村塁も履いている人気のバッシュ、NIKEの“エア ジョーダン”の製作秘話を描いた映画で、スマートな選手が履くスポーツシューズを運動嫌いの小太りオジサンがクリエイトしていく、という半分コントのような前置きがあるものの、気がついたら「NIKE頑張れ!」とスクリーンに叫んでしまいそうな良い映画でした。
あまりにもワタクシの琴線に触れる映画だったので、最高点95/100点の評価をベン・アフレックとマット・デイモンに献上したいと思います。
アナタたちは天才です。
【ネタバレ若干あり】
- お話
- 衝撃!「バッシュのNIKE」が落ち目だった1984年
- 契約を渋られても折れない
- 結局はバスケも会社も「チーム」の一体感がすべて
- VSママ・ジョーダン
- 80’sの音楽はやっぱり良い!
- サクセスストーリーのお手本のような映画
お話
1984年、ナイキ本社に勤めるソニー・ヴァッカロは、CEOのフィル・ナイトからバスケットボール部門を立て直すよう命じられる。しかしバスケットシューズ界では市場のほとんどをコンバースとアディダスが占めており、立ちはだかる壁はあまりにも高かった。
そんな中、ソニーと上司ロブ・ストラッサーは、まだNBAデビューもしていない無名の新人選手マイケル・ジョーダンに目を留め、一発逆転の賭けと取引に挑む。(映画.comより)
衝撃!「バッシュのNIKE」が落ち目だった1984年
1984年のNIKEは営業不振、特にバスケシューズ部門はコンバースとアディダスの二強で、NIKE製バッシュの市場シェア率は20%にも満たない泣かず飛ばず、当のバスケ選手にすら「NIKEってランニングシューズの会社でしょ?」とバカにされてた*1時代が舞台。
そんな部署の立て直しを命じられた小太りオジサンのソニー・ヴァッカロ(マット・デイモン)が主人公。「バッシュと言えばNIKE」の今じゃ考えられない時代背景ですね
NIKE創業者で社長のフィル(ベン・アフレック)から「もうバスケの部署は最後通告だからな、頼むぞ」と、社員としては地獄みたいな発破をかけられ、新規バッシュ製作に取り掛かるソニー。前述の競合二社との売上の差に心が折れかけるソニーですが、そんなタイミングでNBAデビューしたばかりのマイケル・ジョーダンに目をつけます。
契約を渋られても折れない
ただ、当のジョーダンは前述のようなネガティブイメージから「いやNIKEのシューズはちょっと…」という状態、ついでにマイケル・ジョーダンはデビューののっけからスター契約だったのでライセンス獲得の金額は愕然とするほど高額。
でも、ソニーはマイケル・ジョーダンのスター性を待ってして諦めきれず、「頭下げてマイケルの情に訴え、超良い靴を一足だけ作って直接プレゼンしよう」と足で稼ぐ*2営業マンのような発想にシフト。選手専属スポーツエージェントをスッ飛ばして、マイケルの金銭管理もしていた母ちゃんデロリスとの直接交渉をする為に、勝手に単身赴任してマイケル・ジョーダンの実家に向かいます。
結局はバスケも会社も「チーム」の一体感がすべて
最初はポッコリお腹もあって頼りなさげな中年ソニーですが、ソニーが徐々にカッコよく見える秀逸さ。(運動嫌いなのに)熱血漢ソニーも去ることながら、手伝う仲間たちもみんな個性派なんですね。
最初は“マイケル・ジョーダンの靴”一本に投資することに懐疑的だったフィル社長も、「分かった。お前のやりたいようにやりなよ。ソニーにまかせたぞ」と、結果的にめちゃくちゃ気持ちがいい経営者なのです。
悪態はつくけど何だかんだ庇ってくれる上司のロブ、契約まわりで奮闘してくれる元バスケ選手でハイテンションなハワード、靴のデザインと製作を行う若干オタク感があるピーターなど、みんなキャラが立ちまくっています。契約を獲得するだけのドラマなのに何でこんなアツい感情になれてしまうのか、これが本作の肝になっています。
VSママ・ジョーダン
ジョーダンの母デロリスの「うちのマイケルはそんなに安くありませんから」みたいな一歩も譲らない強きママ感もあって、ちょいちょい“ママ・ジョーダン VS NIKE陣営”みたいな雰囲気になるのも良かったです。
そんな本作最大のクセモノ、ママジョーダンで手に汗握らされるも、物語が進むにつれて不屈の最強NIKE社員状態になるソニーのおかげで、諸々の計画がドンドン成功していき、その都度NIKE陣営が一致団結していく様はアツかったですね。これらのおかげで、ラストは「よくやったぞみんな!」みたいな感情になります。
80’sの音楽はやっぱり良い!
また、1984年のトレンドをドンドン出してく様も最高で、特に音楽は強烈。
RUN-DMCにシンディ・ローパーなどの当時のトレンドの他、タンジェリン・ドリームの「『卒業白書』のテーマ (Love On a Real Train)」*3や「AXEL F」など当時の映画で使われたサントラも沢山。使いどころもこれ以上ないくらい的確で、随所で音楽センスを感じました。
サクセスストーリーのお手本のような映画
サクセスストーリーの映画、お仕事映画としての内容の重厚さ、音楽センスの良さ等、ケチを付けるところがない完璧な一作で、ワタクシ的に「面白い」以外の結論が出ない濃密さです。
めちゃくちゃ面白いサスペンススリラー『アルゴ』も第一級の面白さでしたが、『アルゴ』をも上回るハイセンスな映画を作ったベン・アフレックの底知らずの監督センスには脱帽です。
冗談抜き*4で過去10年余りで一番面白い映画でした。
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