ヨーロッパのどこかの国のお姫様が親善訪問先のイタリアで公務疲れからヒステリーを起こし、大使館を抜け出した時に出会った新聞記者と1日だけのイタリア観光を行い、気がつけばお互いに恋心が芽生えてしまうというラブストーリー。
現実的に有り得なすぎる設定ではあるものの、ストーリーも王道展開ながら様々な伏線が効いてて見応えがあり、ラストにはビターな感動があります。70年前の映画だからといって侮れません。
【ネタバレなし】
お話
ヨーロッパを周遊中の某小国の王女アンは、常に侍従がつきまとう生活に嫌気が差し、滞在中のローマで大使館を脱出。
街中で彼女と偶然出会ったアメリカ人新聞記者ジョーは、大スクープのチャンスとばかりに、彼女が王女だとは知らないふりをしてガイド役を買って出て、観光気分にはしゃぐアンの姿をカメラマンの同僚アービングに撮影させる。しかし、つかの間の自由とスリルを満喫するうちに、アンとジョーの間には強い恋心が芽生えはじめて……。(映画.comより)
キャスティングがまず大成功している
主演コンビのオードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペックの魅力が大爆発しており、オードリー演じるアン王女は、中盤なんて観光地巡ってただただはしゃいでるだけなのにめちゃくちゃ可愛らしいです。これぞハマり役という役柄になっています。
グレゴリー・ペック演じるジョーに至っても、「この女、王女様だったんかい」と気付くと、新聞記者ということもあって頭の中が特ダネとお金でいっぱいになっちゃうようないけ好かないお兄さんなんですが、これがまた全く嫌味に感じない雰囲気を出しまくってるので絶妙です。
真実の口と「嘘」
それで本作のストーリーの根底になっているのが“嘘”で、アン王女も大使館に戻りたくないこともありアーニャという名前で過ごさなければならず、ジョーも相手にしている小娘が王女と分かっていながら脳内に札束が浮かんでることもあり「王女、一緒に帰りましょう」と言うワケにはいかず、お互いにのっけからつかなくても良いような嘘をついているんですね。
この複雑な関係性もあって生きているのが名シーンとして語り継がれている“真実の口”の場面になるワケで、ロマンティックな雰囲気もありつつ何故か緊迫感もあるというなかなか面白い場面になっているのです。
時代が生んだ傑作
本作を観ると昨今のベタなラブストーリーの数々がどうにも陳腐なお話と感じてしまうんですが、どこまでもプラトニックな2人の関係性のおかげでまさに「先が気になる」的な素晴らしい構成に感じます。
『ローマの休日』公開時と現代を比べると、日本を含めて世界的に王室・皇室へのリスペクト精神が如実に欠落してしまっていることもあり、これからの映画で本作みたいな雰囲気を出すのは困難だと思うので、まさに時代が生んだ名作と言えるかもしれません。