おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ヴァチカンのエクソシスト (2023)』【80/100点: ヴェスパを乗りこなすのは松田優作だけではなかった】

X(Twitter)で本作のプロデューサーのジェフ・カッツ氏が、まさかの流暢な日本語文章で直々にファンとリプで交流するという、ちょっと前のアリアナ・グランデみたいなマーケティングをして話題になった悪魔祓いホラー映画。例の如くワタクシもジェフ氏のXを見て鑑賞したクチなのですが、だいぶ面白い映画でした。

【ネタバレなし】

お話

1987年7月、サン・セバスチャン修道院。アモルト神父はローマ教皇から、ある少年の悪魔祓いを依頼される。少年の様子を見て悪魔の仕業だと確信したアモルトは、若き相棒トマース神父とともに本格的な調査を開始。

やがて彼らは、中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判の記録と、修道院の地下に眠る邪悪な魂の存在にたどり着く。

序盤はほとんど『エクソシスト

1974年の大名作『エクソシスト』みたいな“引越してみたらその土地の怪異に触れ、子供が悪魔に取り憑かれて…”って…まあ“みたいな”というか割とそのままな内容。

さすがに『エクソシスト』のような退廃的な雰囲気は本作には無いですが、悪魔祓い場面をこれでもかとド派手な映像にしているのが良かったです。

↓ ちなみに、前述のジェフさんのX ↓

実在の人物 アモルト神父

主演はイカつい系俳優の大御所ラッセル・クロウで、実在の悪魔祓い師ガブリエーレ・アモルトというイタリア系司祭を演じております。

ラッセル・クロウってオーストラリア人じゃなかったっけ?」という一番大きな疑問は一旦置いておいて、還暦前にして色んな意味で丸くなり、若干マスコットのような可愛らしさも漂うラッセル・クロウの見た目も相まってか、神々しい貫禄とユーモアも漂うひょうきんオジサンキャラがごっちゃになった雰囲気になっています。

「アモルト神父」はすごい人

このアモルト神父なのですが、タイトル通りローマ教皇直属の悪魔祓い師“チーフ・エクソシスト”という冗談のような肩書きを持ち、これまた冗談のような“国際エクソシスト協会(International catholic association of exorcists)”という名前のローマ・カトリック教会の悪魔祓い専門組織のトップに君臨していた人なんだそうです。

ちなみに1974年の『エクソシスト』の監督で、先日亡くなったW・フリードキンが監督した『悪魔とアモルト神父-現代のエクソシスト-』という、ドキュメンタリー映画が作られていたりもします。

とりあえず、こんな感じでサラッとまとめてもすごいエクソシスト(祓魔師)であることが分かるのですが、本作におけるアモルト司祭の面白いところが、世の中の“悪魔祓い”の98%は統合失調症などのメンタル要因であると言い切り、要は「何でもかんでも悪魔のせいにするな」というフラットな姿勢を持つ人なんですね。

その上で現場に探偵物語』の原チャリ“ヴェスパ”で乗り付け、悪魔祓いの前には酒をグビグビあおるという、あまりにも気持ちが良すぎるオジサン。本当のアモルト司祭がこんな感じの、高貴なのか変わってる人のどちらかなのか分かりませんが、そんなちょっと可愛いエクソシストオジサンをラッセル・クロウが飄々と演じております。

後半からはかなり派手な映像が満載

後半からは気の良いオジサン司祭の空気感はそのままに、現場にいた新人神父のエスキベルとアモルト司祭のコンビによるバディ物的な展開に徐々になっていくのもまた良い。2人が一つになった辺りから悪魔の猛攻も激化して、そのまま突入するド派手の悪魔祓いシーンは「待ってました!」と言いたくなるようなライブ感になっています。

如何せんエンタメに振り切れ過ぎてて、ホラー映画としては一切怖くないという致命的な点は正直あるんですが、配信とかで出てきたら何回でも見直したくなる良質のエンタメ映画でした。

続編がいくらでも作れるっぽい

早くも続編製作が決定したとかで、本作のラストで「悪魔が封印されている場所があと199箇所ある」と言っていることもあり、極端な話だと後続作は最大199作もネタが擦れて製作可能ってことにはなるので…ぜひ頑張ってほしいですね、悪魔祓い映画で寅さんの連作越え。