おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『沈黙の艦隊 (2023)』【70/100点: 描写は良いのにオチが…】

かわぐちかいじの同名漫画を映画化したサスペンスアクションで、防衛省海上自衛隊が全面協力したというディテールに拘った描写は見応えがありました。

ただ、冒頭とラストで出てくる上戸彩などのマスコミの存在があんまり意味がないことや、『デューン/DUNE 砂の惑星』のように「皆さんが観てくれたら続編ありますからね」と言ってるかのような、おそらく続編製作前提の尻切れラストは些か残念。主人公は本作でプロデューサーを務めた大沢たかお

【ネタバレ若干あり】

お話

大沢たかおが演じている海江田四郎は海自の潜水艦“やまなみ”の艦長。

冒頭時点でこの“やまなみ”は事故で沈没、海江田も殉死をしてしまいます。しかしこの沈没事故は自衛隊が目論んだ偽装で、日米が極秘で共同開発した原子力潜水艦“シーバット”の活動開始を隠す為の偽装事故だった、というのが真相でした。

そもそも何でそんなまわりくどいことしているかと言うと、官僚及び国会内における原潜保有での反核思想政治家からの批判を受けないようにする為*1で、「“シーバット”は米海軍から借りてる原子力潜水艦」という体で共同開発を行い、海江田他潜水艦のクルーも死んだこと(法的には死人で日本人ではない)にする、という事実が必要、と断片的にですが語られます。

ただ、海江田自身は日本初の原潜艦長となったことで自身の思惑を達成する為、米海軍から原潜“シーバット”もろとも逃亡を行い、米軍の第7艦隊や海江田の元で副官を務めていた経験がある深町(玉木宏)率いる潜水艦“やまなみ”が追跡を行う、というお話です。

軍事描写はやたらとカッコイイ

大沢たかお玉木宏はなかなかのハマり役で、特に大沢たかお自衛隊というか“軍師”って感じのカリスマ感も漂ってます。前述の通り、潜水艦の艦内描写や良く動くカメラワークも『U・ボート』みたいでカッコよく、米軍が“シーバット”を攻撃することについてのシビアな判断が動く展開や、日本初の防衛出動の是非など、防衛省が監修したこともあるからか、なかなかリアルな描写が続きます。

防衛出動と言えば『シン・ゴジラ』がお馴染みですが、『シン・ゴジラ』ほど淡々と話運びはされてないので結構分かりやすかったりします。

戦闘シーンや音響もかなり力が入っており、ワタクシはIMAXで鑑賞したものの、砲弾が右に左に来る感じの臨場感はすごかったです。もはや「邦画だから」と言ってられない時代が来たのかもしれませんね。

結末がっかりオブザイヤー

ただ、中盤くらいになると薄ら気がつくのですが「こんな壮大に風呂敷広げてどうオチ付けるんだ…」となってきてから、すごく尻切れで終わるラストが非常に残念で、「こ…こっから本番なんじゃない…?」というところで終わります。せっかく描写はしっかりしてたのに勿体無かったなあ。

相当に力が入っている映画なのは分かるんですが、今年のオチガッカリ映画でもあります。和製『レッド・オクトーバーを追え』にもなれそうなポテンシャルはあった気がするのですが、ワタクシが漫画未鑑賞だから故なのか消化不良感がすごかったので、絶対に続編作った方が良いと思いますよ。

*1:実際の話として、自衛隊の潜水艦はすべてディーゼル型で、原潜は一隻も所有していない。