おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル (2023)』【75/100点: ヤケクソで冒険に行くおじいちゃん】

名作冒険シリーズ『インディ・ジョーンズ』の最新作で、“最終章”と銘打たれた本作。今回からパラマウント・ピクチャーズからディズニーが製作に移ったこともあってか、シリーズで定番だったパラマウントロゴからオープニングカットに繋がる映像遊びがなかったのが残念*1でしたが、その後はインディらしいノンストップアクションの連発する楽しい映画でした。

【ネタバレなし】

お話

考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズの前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラーを相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる。

月刊ムー読者が喜びそうな設定

今回インディが追い求めるのは、月刊ムーで頻繁に取り上げられるオーパーツアンティキティラ島の機械”で、この“アンティキティラ島の機械”が古代ギリシャの数学者アルキメデスが作った遺物=即ち「運命のダイヤル」である、という設定になっています。曰く、この機械が「時間の裂け目を作り出す機械」というワケで、それがインディと敵集団との追いかけっこの理由となります。

老境を迎えたインディ

序盤でインディ自身は長年教鞭を取っていた教職を辞める場面になり、さらに前作『クリスタル・スカルの王国』のラストに超ラブラブで繋がったはずのマリオンとの離婚が控えているなど、これまでのシリーズと比べてもなかなかシビアな環境にて登場します。老年になり思いっきり老け込んだこともあり、過去の冒険に対しても「あんときは若かったからなあ…」とインディらしくない哀愁を漂わせてます。

歳下に奮い立たされるヤケクソ冒険家

そんな爺インディを冒険へと奮い立たせる2人が登場します。1人はインディの旧友バズの娘ヘレナで、冒険心はインディ以上の女性で歴代ヒロインの中でもなかなか狡猾さが滲み出てるキャラクター。だいぶ迷惑なトラブルメーカーなのですが、おじいちゃんインディを数々のアクションの渦に引っ張っていく超アクティブな人です。

もう1人がドイツ生まれの学者フォラーで、とっくに崩壊したはずのナチスドイツの思想に毒された人物設定になっています。インディとは第二次大戦中から因縁があり、この因縁の元となっているのが“アンティキティラ島の機械”、即ちタイトルにもなっている「運命のダイヤル」というワケです。

このフォラーは「ナチスが戦争に負けたのではなくヒトラーが負けた」、要はナチスは今も戦争に負けてない、というヤベえロジック*2が行動原理になっており、戦後にアポロ計画に関わるほどの功績を手にした人物なのに、裏ではナチズム思想集団を組織しています。

パッと見はインテリで静かな人間なのに超ブッ飛んでるキャラですが、演じているのが『007/カジノ・ロワイヤル』の出演以降、日本でも人気が高いマッツ・ミケルセンなこともあり、悪役の魅力がダダ漏れしています。

今回のテーマは「老い」

ただ、今回のインディの裏テーマ的なのが「老い」そのもので、インディは前述の通り本職の教鞭を辞して、生き甲斐だった考古学を捨てなければいけない状況になっています。考古学と冒険は1セットだったことに加えて、家庭も既に崩壊したインディ的に、「切り替えて個人で研究頑張れば良いじゃん」って話にもならないのです。*3

さらにインディは、いつもと異なり今回の冒険に対して全然乗り気じゃない状態からスタートし、肝心の“アンティキティラ島の機械”に対しても中盤くらいまで「アレには何の価値もねえっての!」みたいなスタンスです。今回はここが面白いところで、大して価値を感じてなかった遺物が、自分の考古学のルーツに繋がるというドラマはとても良かったと思います。

やはり「老い」が気になるが…

まあ、ハリソン・フォードも80歳のおじいちゃんってことで、アクションシーンもインディが気がついたら輪の中心に居ないみたいな変な構図になっているのもチラホラあり、流石に初期三部作のようなパンチには欠けてる印象ですが、話が面白かったので良かったと思います。ラストの展開も胸熱でした。

*1:定番オープニングに関しては、「シンデレラ城で同じこと出来るだろ」と思ったのはワタクシだけじゃないはずです。

*2:ほとんどネオナチ的な思想

*3:つまり、インディ・ジョーンズ吉村作治にはなれなかったのです。