おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ラストエンペラー (1987)』【85/100点: 皇帝として生まれ一般人として死んだ男】

300年の歴史を誇る満州民族が建国した清国の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の悲劇過ぎる生涯を描いた作品。重厚な物語と、目がチカチカするくらいの極彩色の映像は何度観ても見応えがあります。

【ネタバレ若干あり】

お話

1950年、ハルピン。ソ連での抑留を解かれ母国へ送還された大勢の中国人戦犯の中に、清朝最後の皇帝・溥儀の姿があった。手首を切って自殺を図った彼は、薄れゆく意識の中、波乱に満ちた自身の半生を思い起こしていく。(映画.comより)

不自由すぎる人生

僅か3歳で清国の皇帝となった溥儀(ふぎ)は、在位時点から晩年末期に至るまで“皇帝”の名のもと、全く自由に過ごせない人生を過ごすことになります。溥儀の生活は、客観的に考えると「衣食住全部周りがやってくれるなんてめちゃくちゃ良いじゃん」とも思ってしまいますが、356日×何十年とその生活をすることになる溥儀のことを考えると、息が詰まるくらいに辛い生き方です。

幼少期の生活はすべての時間を紫禁城で生活し、大人になってみたら清国は滅亡し、紫禁城を突然追い出され…。さらにその後満州国皇帝に即位しつつも、今度は太平洋戦争下の日本軍の傀儡として過ごす、という地獄のような人生となります。

このように凄まじく可哀想な満州人皇帝の溥儀を、事実を基にした映画らしく淡々と追う内容になっており、凡庸なお涙頂戴映画とはまるで異なる感動を味わえます。もう溥儀が可哀想だし不憫で。最終的に一般人の庭師*1として人生を真っ当するのですが、皇帝として過ごすか一般人として過ごすか、どちらが本人にとって幸せだったのかは溥儀にしか分からないことでしょう。

映像と音楽の素晴らしさ

悲劇的な人生を追う内容ながらとにかく映像が綺麗で、名シーンとして名高い、子供の溥儀が紫禁城にて即位を行う場面から息を呑むように美しい映像美になっており、圧巻以外の何物でもありません。また、坂本龍一トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンらが手掛けた音楽もとても美しく、アカデミー賞受賞も否が応でも頷ける美しい旋律も聴き応え含め完璧です。

良い映画は余韻がある

ワタクシ個人的には、映画としての完成度はほぼ優等生と思っている名画で、ラストになってやっと幼少期のような無邪気な笑顔を見せるジョン・ローン演じる溥儀の演技には感銘を受けます。この笑顔を見る為のだけでも本作は観る価値のある一作なのでは、なんて思います。やはり良い映画は心が洗われますね。

*1:ただ、実際の話としての溥儀は、庭師として過ごしたのは一瞬で晩年まで要人として過ごしたようなので、ここら辺はドラマとして楽しむのが吉ですね。