おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『パルプ・フィクション (1994)』【90/100点: オッサンのケツ穴で7年間隠された金時計】

タランティーノの評価を決定付けた犯罪ドラマで、どこか抜けてるマフィアの面々や頑固な落ちぶれボクサーが魅せる、独特のユーモアが漂う予想外な展開の数々がそれぞれかなりシュールでいつ見ても笑えます。

本作のリバイバル上映がやってて観たんですが、初見時から全く変わらない圧倒的な面白さには改めて凄みを感じる部分だと感じました。何十回も観てるのに何でこんなに飽きないのか、自分でも不思議になってしまう一作です。

【ネタバレなし】

お話

ギャングのビンセントとジュールスは組織を裏切った青年の家を訪れ、盗まれたトランクを取り返す。また、ボスから愛妻ミアの世話を頼まれたビンセントは彼女と2人で夜の街へ繰り出すが、帰り際にミアが薬物を過剰摂取し昏睡状態に陥ってしまう。一方、落ち目のボクサーであるブッチは八百長試合を引き受けるが裏切って勝利を収め、恋人とともに街から逃亡を図る。(映画.comより)

入り組んだ時間軸

内容はオムニバス映画的に3軸の構成になっており、

ボスの愛妻ミアのお世話を頼まれたヴィンセントの一晩

八百長を嫌がって夜逃げしようとする落ちぶれボクサーのブッチがマフィアが籠城する自宅から金時計を取り戻そうとするお昼

裏切り者から集金を終えたヴィンセントとジュールスの朝

が時間軸行ったり来たりで描かれます。

タランティーノの真骨頂である無駄話が全編で貫かれており、同じような構成である『レザボア・ドッグス』から正統進化したような無駄話(?)っぷりです。

怪演!クリストファー・ウォーケン

中でもワタクシが好きな場面は、ブッチ(ブルース・ウィリス)の少年期回想場面で登場する名優クリストファー・ウォーケン演じるクーンツ大佐の金時計受け渡しのエピソードで、シリアスな顔で「君(ブッチ)に受け継ぎたい金時計は、ベトナム強制収容所で君の親父の尻で5年、俺の尻の穴で2年大切に守ってきた」と話す場面は、何回観てもくだらな過ぎて笑ってしまいます。何でよりによってオッサンの尻穴の中で7年温められた金時計貰う展開になるんだよ、とワタクシは大爆笑なのは勿論のこと、映画館もドッと笑いに包まれてました。

その際にさらっと言われる「君の親父は赤痢で死んだ」と、明らかに金時計が尻に入れてたのが原因で死んでるってのもポイントです。

「ブッチの親父が死んだ理由は戦争関係ないんかい!」みたいな。

暴力シーンとユーモラスなシーンの融合

そんなシュールな笑いが要所要所で挟み込まれる展開に、突如挟まれるドライな暴力シーンもパンチが効いており、そのおかげで物語の緩急も凄まじく、3時間近い長尺もモノともしない圧倒的なスピード感です。

そのストーリー運びの巧みさは見事としか言いようが無く…いや、よくよく考えてみたら無駄話ばっかりだから隙だらけなような気もしますが、そんなタランティーノワールド全開な展開は楽しくて仕方ありません。

とにかく俳優がイキイキしてる映画

また、俳優陣のハッチャッケぶりも見事の一言で、何てことない飯の場面で『サタデー・ナイト・フィーバー』風のダンスで魅せてくれるジョン・トラボルタに、往年のアクションスターらしくないダルそうな演技に終始してるブルース・ウィリスも最高ですが、やはり本作のMVPはサミュエルでしょう。

サミュエル・L・ジャクソン演じるジュールスの圧倒的強面マフィア感がムンムンな秀逸なブチ切れ演技、それなのに誰よりも信心深いという理解不能過ぎる破茶滅茶キャラぶりはキャラ立ちしまくってて見事の一言。

優しいのか怖いのか、はたまた筋金入りのアホなのか良く分かんないイカついオジサンギャングぶりは見事の一言で、本作の雰囲気にピッタリ過ぎる、ある意味本作『パルプ・フィクション』のキャラクターでしか成立し得ない複雑な登場人物を見事に演じてます。

アクションも大して無ければ大きなストーリーの動きも極端にない映画なのに、ここまで面白いのはのは奇跡としか言いようがないな、とワタクシ的に思います。

さすがのタランティーノ映画でした。