おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『バットマン (1989)』【75/100点: ノリノリのジョーカーVS謎行動のヒーロー】

良くも悪くも「洗練されてないティム・バートンの映画」という感じで、監督独特のゴシック感は至るところで垣間見えるものの、他のバートン映画と比べても、はたまたその後のバットマン映画の中でもダントツの怪しさを感じます(一応、褒めてます)。

【ネタバレなし】

お話

架空の都市ゴッサムシティで、犯罪者を退治するヒーロー、バットマン。女性カメラマンが彼の正体を突き止めようと奔走する一方で、彼は犯罪組織と対決する。

Mr.都市伝説

本作のバットマンは、その後のバットマンを含む他のアメコミヒーローと比べるとやや特殊な登場をしてきます。物語冒頭の時点で「闇から現れ悪を成敗する蝙蝠」として既に自警活動を繰り広げている存在になっており、似たような登場をロバート・パティンソン版の『ザ・バットマン』がやっているものの、アッチはあくまで「僕はバットマンだ」と世間に存在が認識されている状態で自警活動を行っていますが、このキートン版『バットマン』は自分の存在を犯罪者たちに何となく匂わすという、ほぼセルフプロデュースでMr.都市伝説的な存在になっています。

そのおかげもあってか、特にチンピラたちは噂話をしただけで震え上がるほど怖がっていて、完全に畏怖の対象になっているというワケです。そんなあまりにも回りくどい独特な活動方法もあって「何がしたいんやコイツ」感がすごいんですが、ここはティム・バートンの映画で良くあるテーマ“孤独な人間”的なアプローチもあるんだろうな、とワタクシ的に思います。まあ、分かりづらいですけど。

ハイテンションな悪役ジョーカー

一方で本作のヴィランとして登場する“ジョーカー”を演じているのは、名作に多数出演している誰もが認める大スター、ジャック・ニコルソン。思いっきり陰キャバットマンと比べると、あり得ないくらいハイテンションな“ジョーカー”として登場します。

演じているジャック・ニコルソンが『シャイニング』ばりにノリノリで悪党を演じているので、この点はテンションの低いバットマンと丁度良く対照的になっており、アクション映画のバランスとしてはまあまあ理想形とも言えるんじゃないでしょうか。

アクションは凡庸

その肝心のアクション演出が割と凡庸で、その上でティム・バートン的な外連味もだいぶ薄口なので、ここら辺はちょっと残念なところです。また、バットマンとジョーカー以外のキャラクターがあんまり魅力がなく、ヒロインのヴィッキーに至っては、新聞記者なので意図的にブルース・ウェイン(バットマンの表の姿)に近づき、気が付いたらブルースと恋に落ち、そして連れ去られ…と分かりやすいくらいコミック的なおバカヒロインです。

とはいえ、本作で露見してる欠点は、続編であり大傑作『バットマン・リターンズ』でほとんどが概ね改善されるワケですが、まあ壮大なピッチング練習と思えば良いんだと思います。すごい薄口ではあるものの、アメコミのアクション映画として観れば、そこそこは面白めの映画なんじゃないでしょうか。

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