最近ご無沙汰だった俳優ブレンダン・フレイザーが大熱演をしたドラマ。色んな“愛”を失って過食に走った体重約270kgの男が、死期を悟って最後に取り戻したかった“愛”を確認する、という内容。
鬱映画ばかり作ってるダーレン・アロノフスキー監督らしい精神的にくる一作です。とはいえ、泣けるプロレス映画『レスラー』以来の快作だったと思います。
【ネタバレなし】
お話
歩行器を使わないと動けないほど太ってしまったチャーリーは、ある日の月曜日に急性の心不全で死にかけ、自分の命があと1週間もないことを知ってしまいます。元々世捨て人だったこともあり、それこそ鯨(The Whale)のように太ってしまった自分の姿を世に晒したくないチャーリーは、病院に行くことも拒否してアパートの一室で人生を真っ当しようと決めます。*1
心残りは自身がバイセクシャルだったことで、結果として見捨ててしまい数年間疎遠になった娘のエリーですが、このエリーがとんだ不良娘に育っていることを知るも、チャーリーは「自分の文学的才能を潜在的に受け継いでいる」と確信しているエリーに対して、父親として最期の教育をしようと奮闘します。
卑屈で可哀想なチャーリー
冒頭から「ごめん…ごめん…」と卑屈な様子のチャーリーの可哀想な様子が描かれ、ブレンダンの圧倒される役作りのおかげでチャーリーはまるで実在しているかのような説得力があります。チャーリーは色んなことから逃げ続けて、激太りして外にも出なくなってしまったのですが、末期を悟って改めて見た自分の人生はもはややり直しが効かないことばかり。可哀想でしたね。
ミニマムな舞台だけど、言っていることは人生教訓そのもの
舞台はほぼチャーリーが住むアパートの中だけなのですが、チャーリーの身体の醜さとはほとんど真逆な小綺麗な部屋で、チャーリーの繊細さを見事に表しています。小綺麗とはいえ、隠し道具のようにオヤツと飯がいっぱいあるんですが…
ワタクシ自身、アラサーの昨今で「人生は残酷」と痛感するタイミングが時折あるんですが、1人の人間として生きることによって生じる、生きることの残酷さを良く描いたパワフルな映画でした。メンタルにビシバシくるなかなか鬱な映画でしたが、ラストのチャーリーの“挑戦”はかなり胸にくる瞬間だと思いました。
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*1:そもそもアパートの2Fに住んでて太り過ぎだから降りられない、という問題もあったんですが。