原発核燃料のメルトダウンを比喩した“チャイナ・シンドローム(The China Syndrome)”が題材の映画。
原子力発電所の設計不良により発覚したメルトスルーの危機をどうにかして防ごうとする初老の生真面目オヤジ、報道で原子力発電所管理の杜撰さを訴えようとする報道キャスターとカメラマン、そして原発利権を手放したくない電気会社による三つ巴の戦いを描いた内容になっています。
【ネタバレなし】
お話
人気TVキャスター、キンバリーはカメラマンのリチャードと、原子力発電所の取材中に恐るべき “事故”を偶然フィルムにおさめる。しかし、TV局は何故か放送を禁止してしまう。
ベテラン技術者のジャックは、その“事故”の際の立役者となるのだが、“事故”に疑問を抱く彼は何者かに命を狙われはじめる。そして彼らはそれぞれの立場から、背後にうごめく巨大な陰謀に迫っていく…。(SONY PICTURESのHPより)
あらゆる要素が完璧にまとまってるサスペンス
基本的に地味な雰囲気ながら、話の中心になっているのは州が一箇所丸々生活出来なくなるような危機が根底で、“お上VS末端”的なお仕事映画の側面もありつつ、本来専門分野ではないことに立ち向かう人々の様子もあり、更に言えば金銭の為に他人の命なんて何とも思わない人たちも居るので、所謂ポリティカルサスペンス的な要素もあります。
こんな感じで複雑な内容になっているんですが、ほぼ2時間なのに驚くほど上手いこと纏まってます。
意外と身近な原発問題
現在の我々の生活においても身近な存在である原発がテーマなこともあり、全編に漂うとんでもない緊迫感もなかなか秀逸で、おかげで終始手に汗握るような雰囲気なのも良かったです。古い映画だからといって侮れないくらいに面白いサスペンス映画だと思います。
本作で扱っているのはあくまでフィクションとしてのメルトダウンなのですが、本作で扱ってる題材よりもっと酷い原子炉建屋の爆発を引き起こしたチェルノブイリ原発や福一原発など、この映画で語られることが本当に発生してしまった事例もあるので、本作の先見性の高さには驚かされます。名前は前々から知っている映画でしたが、初鑑賞ながらこんなに面白い映画だとは思ってませんでした。
生真面目オジサン役のジャック・レモンによるラストの渾身の命をかけた叫びも、余韻を残すダークなラストシーンも非常に素晴らしく、シンプルに素敵な映画だなと思いましたね。
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (角川文庫) [ 門田 隆将 ] 価格:924円 |