おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『十一人の賊軍 (2024)』【90/100点: 暴れん方時代劇】

ワタクシが大好きな『県警対組織暴力』の脚本家・笠原和夫が残したプロット(脚本の前段階)を基にしたという群像形式のアクション時代劇。笠原和夫の脚本なだけに、どことなく血生臭さやゲスな男たちが行うゲスな行動にも堂が入っており、『孤狼の血』で東映実録ヤクザモノを再現して見せた白石和彌監督の手腕が発揮されています。

「これ深作欣二作品じゃないか」と思ってしまうのもご愛敬で、『碁盤切り』では白石作品としても時代劇としてもだいぶ大人しかったこともあってか、そのハッチャケぶりはなかなか見応えがあり、個人的には結構楽しめました。

【ネタバレなし】

お話

1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争

そのさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた、同盟への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた11人の罪人が、新発田藩の命運を握る、ある砦を守る任に就き、壮絶な戦いに身を投じる姿を描く。(映画.comより)

10人なのに「十一人」

話としては幕末の戊辰戦争の時期が舞台で、新潟の小藩であった新発田藩天皇側の新政府軍に寝返った実話も基にした内容になっており、新発田藩を守る為の「城壁」として恩赦のダシにして家老に使われる十人の罪人の姿を描いた話。これだけだと「数合ってないじゃん」って話なんですが、タイトルの”十一人”もラストの伏線になっており、これがまた面白いところ。

七面倒くさいキャラ説明場面はない

何と言っても俳優陣がとてもハッチャケてるのが良かった。こういう『七人の侍』方式の群像劇にしてはキャラクターもあんまり掘り下げていない印象もありましたが、前述の各人のキャラ立ちに加えて、その分めんどくさい展開もなかったので、話にスピード感あってなかなか良かったです。

ランタイムも2時間半くらいの長尺ではありましたが、そんな尺も感じないほど豪快に進んで心地よかったです。

とにかく派手

また、ロケーション自体も(予算のせいなのか)ほとんど変わり映えがないものの、映像の迫力がなかなか秀逸で、爆破場面にゴア描写とバイオレンス映画好きには贅沢この上ない映像的盛り上げを魅せてくれます。

大砲での破壊描写もこれでもかと見せてくれるので、邦画としては割と迫力がある音響と共に耳がやられるような音圧に席から飛び上がりそうでした。

チョロの息子が良すぎる

俳優陣では仲野太賀の父親譲りとしか思えない眼力がとても強烈で、仲野くんが演じる鷲尾は集団をまとめるリーダー的な存在なこともあり、血が湧きたつような人殺しの眼はとても良かったですね。やはり血は抗えないというか、とてもカッコ良い役柄でした。

そんなワケで今年観た邦画だとおそらく一番面白い映画だった気がするんですが、話も難しくなく、かと言って昭和映画のリスペクトも忘れていないという良い映画でした。こういう泥臭くてお金かかった邦画、もっと増えてほしいですね。

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