「邦題だっせ~ッ!」という根本的な欠点は置いておいて、リドリー・スコット監督らしい映像美と映像的なダイナズムを堪能できる超大作になっています。間もなく87歳のおじいちゃん監督がこんな若々しい映画を作ること自体が何より驚異的に感じるものの、今回は別の切り口で行われる「復讐」の話になっており、剣闘士として成りあがっていく様は前作同様に胸を躍らされます。
とはいえ、ラッセル・クロウとホアキン・フェニックスという、前作の2大クセモノ俳優が演じたそれぞれのキャラが濃厚だったこと、且つ彼らのおかげで勧善懲悪がシンプルだった分、本作は色んな人の思惑が渦巻く政治劇に近い作りになっており、そこら辺は評価の別れ処なんじゃないかな、って思いました。
【ちょっとだけネタバレあり】
お話
将軍アカシウス率いるローマ帝国軍の侵攻により、愛する妻を殺された男ルシアス。すべてを失い、アカシウスへの復讐を胸に誓う彼は、マクリヌスという謎の男と出会う。ルシアスの心のなかで燃え盛る怒りに目をつけたマクリヌスの導きによって、ルシアスはローマへと赴き、マクリヌスが所有する剣闘士となり、力のみが物を言うコロセウムで待ち受ける戦いへと踏み出していく。(映画.comより)
キャストはほぼ新キャラ(当たり前だけど)
本作の主人公は前作でも登場したコモドゥスの甥のルシウスで、前作で天才子役のスペンサー・トリート・クラークが演じた役柄を、最近人気が急上昇しているポール・メスカルが演じています。
まあ大人の事情を感じてしまいますが、マキシマスに憧れたピュアな少年ルシウスが何故復讐に燃える男になるのか、が本作の序盤で描かれます。敵(かたき)となる将軍アカシウスをペドロ・パスカル、ルシウスを剣闘士として成長させローマの政権を握ろうと暗躍するマクリヌスをデンゼル・ワシントンが演じています。
ローマから離れたルシウスのその後
序盤の時点だとルシウスはとある事情でアフリカ大陸のヌミディアで“ハンノ”という名前で過ごしており、現地で奥さんをゲットしていたものの、ローマ軍の侵攻により奥さんを殺されてしまいます。
そんなワケでかつて自分が過ごしていたローマ帝国に対して恨みを抱いてしまうのですが、アカシウス将軍もこの無意味な戦争に嫌気がさしており、ローマ帝国の実権を握る双子の皇帝に対して反乱を起こそうとします。そんな混沌とした設定の中、『アウトレイジ』の片岡刑事よろしく、デンゼル・ワシントン演じるマクリヌスが色んなところを焚きつけて暗躍する陰謀劇が展開されます。
老境にて若々しい演出のリドリー・スコット
監督が同じなだけあってか剣闘シーンの迫力は抜群で、映像技術も前作から25年余りで各段に上がったこともあり、動物とのバトルもあったりとバラエティに富んでいます。結構残酷ながらも何となく上品にも感じる絶妙な塩梅の映像美はリドリー・スコットらしい手腕を十二分に堪能出来て良いです。
監督としては『ナポレオン』に続いての史劇モノながら、2年続けてボリューム感がすごい戦闘シーンを構築する辺りはやはり巨匠たる所以なのかなと思ったりもします。
【欠点】前作のアツいセリフは無視される
とはいえ、前作でマキシマスが臨終寸前で言った「(暴君コモドゥスが死んだから)ローマに平安が訪れるぞ」という、最高にクールなセリフが本作ではガッツリ無視されており、「ルシウスは後継ぎとして命を狙われるから、実は前作の直後にローマを脱出させられた」という若干?が出てしまう後日譚が語られます。
「じゃあマキシマスが身体張ってローマを守った意味ないじゃん」的な展開だったので、その点のみワタクシ的には疑問点が出てしまいました。
3作目を作ろうとしているとか!
ただ、そんな細かい点を除けば『グラディエーター』のレガシーをしっかりと保った正当な続編になっており、老いてなお狂い咲いているリドリー・スコット監督の現役ぶりも興味深かったです。90歳近いのに『グラディエーター』の3部作構想まで考えているらしく、まだまだ元気ならばぜひ3作目も観たい気持ちもあるので、これからも現役で頑張ってほしいな、と思うワタクシなのでした。
ラストのリサ・ジェラードによる主題歌『Now we are free (ついに自由に)』も相変わらずカッコいいです。
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