おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『テルマ&ルイーズ (1991)』【85/100点:男性社会からの逃亡】

この間から新宿でリバイバル上映されていたので久々に観たんですが、やっぱり面白いロードムービー。ドストレートな「男性社会からの逃亡」という、もろフェミニズムなテーマで突き進む展開は秀逸そのもので、ラストシーンの見事な爽快さは、ワタクシのこれまでの映画鑑賞歴の中でもかなり上位に好きなオチだったりします。

今では絶対にやらないであろう清々しいくらいのクズを演じるブラッド・ピットも強烈で、今観ても全く遜色のない映画だと思います。

【ネタバレ若干あり】

お話

ある週末、主婦テルマとウェイトレスのルイーズはドライブ旅行に出かけるが、途中で立ち寄った店の駐車場でテルマが男にレイプされそうになり、助けに入ったルイーズが護身用の拳銃で男を撃ち殺してしまう。

ルイーズには、かつてレイプ被害を受けたトラウマがあった。警察に指名手配された2人は、さまざまなトラブルに見舞われながらメキシコへ向かって車を走らせるうちに、自分らしく生きることに目覚めていく。(映画.comより)

キャラが良すぎる映画

単純なストーリーではあるものの、結構バカで学習能力があんまり無いテルマと、暗い過去がありながら勝ち気だけどお人好しというルイーズの関係性が面白く、どこか牧歌的な雰囲気から破滅型の女コンビになってしまう2人を上手く演じています。

また、本作では全員脇役である男性俳優陣のキャラクターも見事。特に、ルイーズの恋人・ジミーの男前っぷりはなかなか秀逸で、演じるのが北米版の白竜ことマイケル・マドセンなので、普段は粗暴なのにルイーズが心配過ぎてすぐに目の前に現れるという、あのイカツイ顔でリアルツンデレを演じる様はとても萌えます。

男性社会VS女

とはいえ、本作に登場する男性たちは、テルマとルイーズの2人から見ると「男だからって好き勝手に言いやがって」くらいのノリで、前述の(男性から見たら男前な)ジミーに至ってもルイーズは「あの人、束縛が酷くて…」的なことまで言っています。

ミソジニーの男たちが女の本当の気持ちなんて分かりっこない、的なのが本作の裏テーマなんだと思いますが、これがまた本作のテーマを深くしているように思います。そう考えると、本作ってかなり先進的な映画だったんだな、とも思うんですが、そんなセンシティブなテーマも嫌味なく取り入れているのが本作の良いところです。

映像美もすごい

CMディレクター出身のリドリー・スコット監督らしく、ただ車で一本道走っている風景すらカッコイイ、というキメキメの映像が連発しており、それだけでも見応えは十分です。比較的緩い展開から衝撃のラストは、映像派のスコット監督だからこそ出来たであろう画力の強さで、本作が今でも支持されているのはリドリー・スコット監督だったからこそなんじゃないかと思います。

思えば本作の「ちょっとの失敗で収集つかなくなった女性」というテーマを、後に『ハウス・オブ・グッチ』でも取り扱っているので、スコット監督はこういうお話がそもそも好きだから故にこんなに面白い映画が出来たんでしょうね。