おすぎむら昆の映画レビュー「あんなま」

鑑賞した映画に対して個人的な感想を書いていきます。

『宝島 (2025)』【70/100点: 絶対にもっと長くした方が良かった】

東映が約25億円を掛けて製作した叙情詩的な人間ドラマで、沖縄県内の嘉手納基地周辺に住む若者たちの群像劇。邦画といえば10億円いかないくらいの製作費が相場ですが、その2倍をゆうに超える製作費。しかし内容は米軍基地問題を根底としただいぶポリティカルな内容。東映も攻めたなあと思っていたら案の定大コケをしているらしいんですが、沖縄が太平洋戦争中における日本唯一の決戦地であることの因縁なども盛り込まれており、この内容で大作を作ったこと自体は大変意義のあると個人的に思います。

ただ、描くべき要素が多かったこともあるのか、物語自体はかなり駆け足であり、人物設定や成り行きの唐突さも否めず、ワタクシ的には「2部作にするか、配信でシリーズ化するか」などの選択肢もあったんじゃないか、と思ってしまったのも正直本音です。若松孝二の映画ばりの政治的な内容ながら、この駆け足な点だけはとても残念な部分でした。

《ネタバレなし》

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『秒速5センチメートル (2025)』【90/100点: 決して自分の思い出じゃないのに懐かしい映画】

君の名は。』の新海誠監督による青春アニメの映画化。元々あんまりアニメを観ないので、『君の名は。』もはたまた原作『秒速5センチメートル』も観たことがないワタクシですが、他の映画を鑑賞した時に度々この実写版の予告編が流れており、すごい綺麗な映像が前から気になっていたので今回鑑賞。

予告編のまま、全編に渡って初期岩井俊二作品っぽい陰影の強い映像美や、四季の姿を主人公・貴樹の心象風景として作用させているオシャレな構成、戻れない過去へのノスタルジー的な感情やティーン故のまわりの見えなさなど、自分にもそんなことあったような無かったような的な絶妙な塩梅の10〜20代の思い出などが丁寧に積み重ねられており、青春ドラマとしてなかなか秀逸な作品でした。まあ「元が良いんだろうな」と言えばそれまでですけど。

《ネタバレなし》

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『8番出口 (2025)』【65/100点: シャイニングがお好きなんですね】

インディーゲームの新鋭KOTAKE CREATEの大ヒット同名ゲームを映画化したホラー映画。原作のゲームは、小島秀夫のゲーム『P.T. (サイレントヒル)』などに影響された一人称視点のゲームで、やることはループする駅の地下通路の“異変”を8回見つけてループから脱出する、という要は3D空間を使った間違い探し。ワタクシも1年位前にプレイしているんですが、評判通りなかなか面白いゲームで、個人製作のゲームなので当然ながらそんなにボリュームはないものの、その分値段も安いし、満足度は高い1本でした。

そんな大ヒットゲームの映画化ということで、主演は二宮和也、監督は東宝から独立した敏腕プロデューサーの川村元気、その他スタッフも大作経験者揃いという結構大規模な布陣で映画化。ストーリー的にはイマイチ盛り上がりに欠ける話ですが、映像的には本当にまんま『8番出口』で面白かったです。

【ネタバレなし】

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『バレリーナ : The World of John Wick (2025)』【80/100点: もちろん、女性版ジョン・ウィック】

キアヌ・リーヴス演じる伝説の殺し屋が滅多刺し皆殺しをするアクション映画『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフ映画。シリーズ3作目『ジョン・ウィック: パラベラム』で登場した殺し屋養成組織“ルスカ・ロマ”が大々的に取り上げられる内容になっており、主人公は父親を殺されて“ルスカ・ロマ”に引き取られた女性イヴ。そういえば“ルスカ・ロマ”出身だったジョン・ウィックも勿論登場し、ウィンストンやシャロンなどのシリーズお馴染みの面子も勿論登場。

いつの間にかトム・クルーズの彼女になっていた美人女優アナ・デ・アルマスが最強の女性暗殺者イヴを演じており、本編中の重要な登場人物が『ウォーキング・デッド』のダリル役のノーマン・リーダスだったり、アクションシーンは原作シリーズ譲りの激しさだったりと、かなり贅沢なスピンオフになっています。結構楽しめました。

【ネタバレなし】

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『ジュラシック・ワールド/復活の台地 (2025)』【70/100点: どこかで観たことがあるジュラシック映画】

スピルバーグ監督の傑作である『ジュラシック・パーク』から数えて7作目になる恐竜アドベンチャー映画『ジュラシック』シリーズの最新作。監督は『ローグ・ワン』のギャレス・エドワーズ。7作目ということでストーリーはなかなかに出涸らし感もあり、本作では散々擦られてきた舞台であるイスラ・ヌブラル島すら登場せず、初代でマルコム博士が言ってた名セリフ「生命は必ず道を見つける(Life will find a way)」を地で言っている話ではありますが、それでもあんまり新鮮味はなかったです。

とはいえ、経年と共に映像も発達するワケで、CGと区別がし難くなっている数々の恐竜たちが、本当に人間と共存しているかのようなワクワク感は過去作随一です。まあ、そうなってないと困る、って感じでもあるんですが。

≪ネタバレなし≫

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