おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (2024)』【80/100点: 2020年代の90’s映画】

「実はアポロ計画は宇宙に行ってないんじゃ…?」という陰謀論をネタにした映画で、何とNASA全面協力だとのこと。「天下のNASAを信じへんのかい」と圧力をかけられまくったという『カプリコン・1』の時代じゃ考えられない製作体制の映画ですが、そのおかげか拘った宇宙描写やこの手の陰謀論でお馴染みのキューブリックネタなど洗い浚い取り上げており、その点も楽しめました。

本筋は「アポロ11号を宇宙に飛ばす為に奮闘する人たち」というド直球な内容でもあり、この分かりやすい話もあって広げた風呂敷をどう締まっていくのか的な楽しみが出来るのも良かったと思います。

【ネタバレなし】

お話

1969年、アメリカ。人類初の月面着陸を目指す国家的プロジェクト「アポロ計画」の開始から8年が過ぎ、失敗続きのNASAに対して国民の関心は薄れつつあった。ニクソン大統領の側近モーは悲惨な状況を打開するべく、PRマーケティングのプロフェッショナルであるケリーをNASAに雇用させる。

ケリーは月面着陸に携わるスタッフにそっくりな役者たちをメディアに登場させて偽のイメージ戦略を仕掛けていくが、NASAの発射責任者コールはそんな彼女のやり方に反発する。ケリーのPR作戦によって月面着陸が全世界の注目を集めるなか、「月面着陸のフェイク映像を撮影する」という前代未聞の極秘ミッションがケリーに告げられる。(映画.comより)

カタブツと都会のPRウーマン

舞台は1968年頃のアメリカで、米ソの宇宙競争においてソ連に遅れをとっていた時代が舞台。国から予算を削られ失敗も続いていたNASAの職員であるコールの前に、敏腕PRウーマンであるケリーが現れます。

どう見ても怪しい都会の女であるケリーに対してコールは不信感を抱きますが、ケリーのPR作戦は軒並み成功、人類初の月面着陸を予定するアポロ11号の予算拡充まで達成してしまいます。そんな中、高評価を受けたケリーに対して新たなPR案、そして「失敗が出来ないアポロ計画」への対策として、「アポロ11号の月面着陸を地球で撮影する」という無理筋な発注が来て…というのが本作のお話です。

実話とフィクションが入り乱れた話

そんなワケで、本作のお話はアポロ11号が月面着陸を果たすまでという実話のストーリーと、月面着陸を地上で撮影するチームという嘘のストーリーが同時に進んでおります。「実話を基にしたフィクション」って言葉をそのままやっている映画になっており、この特殊な構成もあってか先が読めないハラハラ感があります。シンプルなようでかなり練られている内容になっており、この点が非常に良かったです。

THE・サクセスストーリー

スカーレット・ヨハンソンが演じるPRウーマンも秀逸で、ちょっと鼻にかかる性格ではあるものの、やっていることは優秀そのもので、落ち目のNASAをドンドン立て直していきます。対する実直なNASAの技術者であるコールは、その真っすぐさでNASAを支え、アポロ計画パイロットたちを導ていきます。そんなワケで分かりやすいくらい対比された男女コンビになっているのですが、そのおかげもあってこの2人の行く末が気になっちゃうのも良かったです。

コケてるらしいけど嫌いじゃない

まああんまりにも分かりやすいお話なので、いくら先が読めない展開とはいえ「何となくこうなるんじゃ…?」と思ってたらやっぱりそうだった、という話なのが残念でしたが、こんなド直球な話もたまには悪くないと思います。

北米じゃ全然売れてないみたいですが、個人的にはなかなか面白い映画でした。