おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『カプリコン・1 (1977)』【90/100点: 陰謀に巻き込まれた宇宙飛行士たち】

ワタクシが子供の頃に、年末の定番番組で『ビートたけしの超常現象Xファイル』って番組がやってたんですが、その番組でよく紹介されていたのが本作。「人類初の火星有人飛行が実は…」という、要は陰謀論を題材にした映画のハシリで、これがなかなか、今観てもひじょ〜に面白い一作でございます。ワタクシ個人的には、“70年代公開の映画”という括りを付けるとすればトップレベルに面白い一作と思っています。

【若干ネタバレあり】

お話

打ち上げ寸前だった有人火星宇宙船カプリコン1の3人の乗組員が船外に連れ出される。宇宙船の故障が発覚したものの、それを公表できず、やむなく関係当局は大掛かりなセットを組んで、その成功をでっち上げることに。

中継映像から不審なものを感じた新聞記者コールフィールドは調査を開始。一方、3人の乗組員たちは闇に葬られようとしていた!

個人的にシナリオが満点の映画

何と言っても面白いのが、本作のストーリーです。

人類初の火星への有人飛行、という途轍もなくデカい大風呂敷がオープニングにて提示されるのですが、天下のNASAが日和ってしまった(技術的に有人火星探索は無理だった)為、急遽、火星探査機“カプリコン・1号”に搭乗予定だった3人の宇宙飛行士たちとNASAのお偉い方が組んで、全世界に向けて“ドやらせ”を組むことに。以降数ヶ月に渡る“偽火星探索計画”は、当初は順調だったものの、実際に火星に向けてダミーで飛ばしていた本物のカプリコン・1号が帰路においてシステムトラブルが発生、それにより宇宙空間に漂うカプリコン・1号の機体自体は完全崩壊してしまいます。

折しも、そのカプリコン・1号の崩壊は全世界に生中継されていた為、「飛行士たちは宇宙空間にて殉死した」ということにしないとNASAとしては都合が悪い、という最悪の状態になってしまいます。当然ながら、立派にやらせを演じていた3人の宇宙飛行士たちは身の危険を感じ、やらせ現場だった倉庫(スタジオ)を抜け出して、NASAと軍の追手から散り散りで荒野を逃げ回る、というのが大筋となります。

このように、あらすじだけでも桁違いに面白いストーリーラインなんです。前半はヒリヒリするようなサスペンス、後半はダイナミックなアクションシーンと、構成上の塩梅もかなりちょうど良く、こういう映画こそ“良い脚本で良く出来た映画”と断言して差し支えないでしょうね。

キャストは脇役俳優ばかり

俳優陣も結構マニア向けの地味なキャストではあるものの、逆に言えば映画のストーリーに全振りしているとも言えます。変なタイミングでスター俳優が出てきてもテンション下がる可能性も大いにあるので、この点の潔さも評価ポイントです

1970年代の映画ながら現代でも充分に楽しめる圧倒的な完成度の映画で、ポジティブにもネガティブにも捉えることができる意味深なラストカットも含め非常に優秀な一作です。年末のこの時期に観た方が良い、とワタクシが胸を張って言いたい至高のサスペンス映画でございます。