おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ミッシング (2024)』【70/100点: 重すぎる社会派映画】

人妻且つ子持ちになった石原さとみが、迷子女児の母親を狂気いっぱいに演じるサスペンスドラマ。どちらかというと、キラキラな雰囲気の役柄が多かった小悪魔リップ女優の石原さとみでしたが、今回はそんなキラキラな雰囲気をかなぐり捨てて終始ドロドロな役になっております。

エンタメ性に関しては皆無に近いくらい無く、「この問題提起の内容はもしや…」と思ったら、やっぱりスターサンズの映画でした。味付けも濃ければ腹持ちも重い、と言った感じの映画でございます。

【ネタバレなし】

お話

沙織里の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。夫の豊とは事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々。そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。

世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように。一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう。(映画.comより)

記憶に新しい失踪事件がモチーフ

内容は山梨のキャンプ場での女児失踪事件が明らかにモチーフになっており、そういえばこの事件の続報として、女児の両親への誹謗中傷で開示請求がなされたってニュースも見た記憶があるので、要はそこら辺の内容が本作で取り上げられるってワケです。

石原さとみが演じている母親も可哀想な境遇でありつつも、落ち度があるかないかどっちなのかなって話ならば、割と落ち度がある方の人間なので、ここら辺も内容としてキモになってると個人的に思います。

暴走していく母親

そんなこともあり、話の展開は不幸が詰め合わせ状態になってるワケで、石原さとみは本編のほとんどを泣くか激怒するか、みたいなという感じになっています。

これがなかなか凄みを感じる部分で、独身のワタクシですら「もう落ち着いてくれ」と思わせるくらいの母親を演じ切っている為、たぶん子持ちの母親ならもっと自分ごとに置き換えてしまうような生々しい役になっている気もします。

父親役の青木崇高もすごい

また、本作の“静”の部分担う中村倫也と森優作の2人も本作の客観性の為に必要な配役で見事でしたが、個人的に良かったのが青木崇高の旦那さん役。「ここで妻の敵になったら彼女が壊れてしまう」とばかりに感情を押し殺しており、こちらもこちらで可哀想な役柄。客観的に考えるとめちゃくちゃ良い旦那さんではあるものの、そのおかげで青木崇高がラストで一瞬見せる大泣き場面はとても印象に残った部分だったりします。「寡黙だけど、旦那も限界だったんだな」的な。

そんなワケで良いところは結構あったんですが、いかんせん重苦しすぎるので「もう一回見るか」と考えるとちょっと一考挟んでしまう映画だと思います。SNSの誹謗中傷版『レクイエム・フォー・ドリーム』といったところの映画、と言った感じの映画でしょう。