元はスタンリー・キューブリック監督の映画として、『2001年宇宙の旅』以来のSF映画となる予定で企画された一作なのですが、紆余曲折あった上でキューブリック監督が突然死。その後、ヒットメーカーのスピルバーグ監督が引き継いで完成させた映画となります。原作はB・オールディスの『スーパートイズ』。
【ネタバレなし】
お話
テクノロジーが天文学的なペースで発達した近未来。人間は“感情”以外の面において万能なロボットを召使いとする生活を送っていた。そんなとき、サイバートロニクス社は世界で初めて“愛する”ことをインプットしたロボットの少年デイビッドを作り上げる。
彼は試験的なケースとしてサイバートロニクスの従業員夫妻の養子となるが、やがて予期せぬ状況の連続で生活を続けられなくなり、デイビッドは家を出る。(映画.comより)
北米興行大失敗の映画
実は本作、ダウナーな内容もあってか欧米での公開でガッツリコケているんですが、何と何故か日本での公開では製作費とほぼ同等の96億円を売り上げた伝説を持つ一作。国内上映作品歴代の興行収入ランキングでもいまだに60位以内というオバケ映画で、日本での記録的ヒットのおかげで損益分岐点を超えたなんて逸話もあります。その割に、今だと全然知名度がないですけど。
スピルバーグのファミリー目線×キューブリックのシニカルさ
読んで字の如く“AI=人工知能”のロボットが題材の映画で、スピルバーグらしい博愛主義的でハートフルな映画…と、言いたいところですが、「人間愛を忘れた人々の残酷さと至上の愛を求めて散るロボット」と、表裏が凄まじい展開はとてもキューブリック的なエグい内容です。ラストの展開も、一見だと感動的な演出にはなっているものの、色眼鏡無しの目線で見てみれば「それ全部紛い物の“愛”なんだぜ」という具合の恐ろしい映画です。
当然ながらキューブリックがそのまま作ってたらとんでもない怪作が出来上がったのは想像に容易いですが、そこは娯楽映画のスピ先生、無難に纏めました。しかも、『未知との遭遇』以来の脚本まで兼務。相当な気合いを入れて撮影に臨んだのが浮かばれます。
名子役ハーレイの全盛期
天才子役ハーレイ君演じるデヴィッドですが、母(購入者)への愛情をプログラミングされた子供型ロボットで、とある理由で家族の一員として購入され、一応派遣先の家で子供として過ごしていたものの良くも悪くもロボット、結果として粗大ゴミのように捨てられてしまいます。「ママ大好き!」とマザコン気質だったデヴィッドは絶望の淵に追いやられるワケですが、それでも健気に「ママに会いたい!」とママを探し始める、なんてストーリーです。
要は漫画版『鉄腕アトム』の序盤みたいな話なんですが、映像の美しさに対して内容はドえらい残酷なので、なかなか見応えがあります。スピルバーグ監督作品の中でも特に映像美に気合いが入っている映画でもあり、重いストーリーとともに見応えがあります。