おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『デイ・シフト (2022)』【80/100点: 貧乏な吸血鬼ハンター】

吸血鬼ハンターが題材のアクションコメディ。

“吸血鬼退治”とは言いつつも、雰囲気は底抜けに明るいので、めちゃくちゃテンションの高い『ブレイド』って感じでそれなりに面白かったです。

【ネタバレなし】

お話

プール清掃員のバドには、別居中の妻子も知らないバンパイアハンターという裏の顔があった。妻は隠し事が多く収入も不安定な彼を見限り、1週間以内に子どもの学費と歯列矯正費用を払えなければ遠く離れた実家へ引っ越すと宣言。

バドは期限までに金を工面するため、かつて規則破りを繰り返して追放されたバンパイアハンター組合を頼ることに。大物ハンターであるビッグ・ジョンの口添えでどうにか復帰を認められたものの、規則に詳しい現場未経験の事務員セスが監視役として同行することになってしまう。(映画.comより)

二重生活の吸血鬼ハンター

まず、良かったのが設定。本作の吸血鬼ハンター(バンパイアスレイヤー)は、単純にお仕事の一環として吸血鬼狩りをしています。そこまではよくある感じですが、「バチカンの洗礼を受けて」とか「司祭が云々」とか、吸血鬼映画あるある設定は基本省かれており、ついでに本作の吸血鬼ハンターは歩合制の業務委託で働いているので、このせいで主人公バド(ジェイミー・フォックス)は貧乏、家庭も崩壊寸前ってなワケです。

この設定が序盤掴みとしての笑いどころになっているんですが、あんまりにも深刻でリアルな状況に噴いてしまいました。しかも、“吸血鬼ハンター”として働いていることは家族ですら口外出来ないので、バドは家族間…というか表向きはビル清掃員として働いていることになっており、懐かしの『トゥルーライズ』を思わせる二重生活を送っている、なんてお話になっているワケです。

ガチンコアクション

そんな情けない中年親父吸血鬼ハンターのストーリーながら、ガチ感が凄まじいアクションシーンの数々は目を見張るモノがありました。「なんだこのギャップは?」と思ったのですが、本作に関わっているスタッフ陣は『ジョン・ウィック』シリーズの皆さんなのです。本作のプロデューサーも『ジョン・ウィック』シリーズの監督、チャド・スタエルスキ。道理で。

吸血鬼が題材ながら、CGIはベース少なめで、『ジョン・ウィック』ライクな…所謂“ガン・フー”がアクションの基本になっております。しまいにゃ主人公バドも情けない中年という設定は何処へやら、バトルアクションはキッレキレになっていくので、もうワタクシぁ大興奮でした。

アクションが凄まじい分、序盤以外のストーリーが「これどっかで見たな」感が凄かったのも正直事実ですが、色んなところを行ったり来たりする忙しいカメラワークも含めて、往年のアクションコメディのパワーアップ版みたいな雰囲気は個人的に好みでした。

スヌープ・ドッグがカッコいい

ジェイミー演じるバドがカッコいいのは前述の通りですが、これまた良いところを掻っ攫っていくのが、ヒップホップレジェンドのスヌープ・ドッグ。愛用の銃がガトリングガンという、中二病患者が興奮でおっ死んじまいそうなナイスガイで、意外と登場場面も多い。最近、お料理本*1出してて「何やってんだこの人」とワタクシは思ってた御仁なだけに、改めてワタクシ的に感服した限りです。

Netflixのこういう「自由に映画作りたまえ」みたいなブレない姿勢はワタクシ的に前から大好きなので、本作も例外なくこのスタンスだったのが良かったです。何となく見始めたら結果として最後まで観てしまいました。シンプルに面白い、おバカなアクション映画だったと思います。続編もぜひ作ってほしい、Netflixのオリジナル作品らしい一作でした。

*1:お料理レシピ本『スヌープ・ドッグのお料理教室』のこと。