おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー (2022)』【75/100点: 病は気から、進化は臓器から】

カナダが生んだ変態映画の巨匠デヴィッド・クローネンバーグの新作。

映倫の規制区分が“PG-12”ってなっていたり、かが屋の加賀くんがYouTubeのPR動画に出てたりとか、「さすがのベテラン変態監督も傘寿で大人しくなったか」と鑑賞前は思ったものの、鑑賞後は「どこがPG-12やねん」と思うくらい、クローネンバーグ監督らしい異形と裸体がたくさん登場する相変わらずのエログロ映画でした。

【ネタバレ若干あり】

お話

「痛み」という概念が無くなった未来世界が舞台で、加速進化症候群(?)という病気により体内に未知の臓器を生み出し、パートナーのカプリースと共にその臓器摘出の様子を“ショー”にして人気を集めているソール・テンサーが主人公。

ソールの“機能してない臓器”は人類の進化過程における新たな器官だろう、と政府機関の臓器登録所(?)から目をつけられるようになるのですが、そんなソールとは別の進化をしたと思われる“プラスチックを食べていた少年”の遺体を持っている男性とソールが出会い…という話です。

相変わらず難解なクローネンバーグ映画

ライトな映画鑑賞者だと「どういうこと…?」って思うのが聞かなくても分かりそうな物語構成ですが、本当にこんな感じのお話になっています。

クローネンバーグ監督は本作のテーマを「人類の進化についての黙想」と語っており、このクローネンバーグ監督らしい初心者お断り感はやっぱり良いですね。

結構グロい!どこがPG-12なんだ!

それで本編で何回か登場する、めちゃくちゃグロい手術シーンの数々なのですが、おそらく美容整形や現代芸術に対する比喩になっているようで、クローネンバーグ映画でよく描かれる“欲求の代償”が本作でも表現されます。人工的な“芸術”は本当に美しいのか、という『ヴィデオドローム』や『イグジステンズ』のような現代風刺的な内容だとワタクシは感じ、その“芸術”だったり“美”の象徴となっているのが、前述のショーのような手術シーンってことなんだと思います。

この手術シーンがそれぞれ抜かりなくグロいので、ここら辺で耐えられない人が結構いそうだな、って感じ。比較的大衆向けなクローネンバーグ映画『ザ・フライ』ですら手術シーンは結構強烈だっただけあって、やっぱりブレないですねこの監督は。「臓器を摘出する“手術”とは新たなセックスなんだ*1」みたいな意味不明な台詞は、この監督の映画でしか聞けない変態ワードですね。

最新作もブレてなかったクローネンバーグ監督

悪夢のような独特のフェチズム溢れる映像はやっぱり見応えがあり、変態映画作ってその道50年にも渡る筋金入りの鬼才監督が作ったエログロ作品を映画館で堪能出来ました。本作は昨年のカンヌ映画祭であまりのグロ描写に退席者が続出した、みたいなニュースがあるそうなんですが、まあそうなるのも頷ける不気味でキモ〜いSF映画です(褒めてます)。

かが屋の加賀くんの動画↓

関連作

osugimura-kon.net

*1:なんちゅう台詞なんだ!